Silicon Valley Workers

シリコンバレーで働く日本人の声を届ける

シリコンバレーから世界中で使われるプロダクトをリリースし続けるPMが語る #プロダクトマネージャーの真髄

インタビューIT系Smuleエンジニアサンフランシスコスタートアッププロダクトマネージャー

圧倒的なリソースで世界をリードするITビッグ5、日常生活を根本から変えてしまうユニコーン企業、ゼロから世の中を変えようとするスタートアップ。そんな多種多様な集合体がひしめき合い、イノベーションを生み出し続ける街、シリコンバレー。

しかし、そんなイノベーションもプロダクト抜きには語れない。そして、そのプロダクトをこよなく愛し、開発のみならずビジネスのことまで考え続けるのがプロダクトマネージャー、通称PMだ。

今日お伺いするのは、NYSE上場企業やシリコンバレーのスタートアップなど大小両方でPMを経験、B2BからB2Cに至るまでグローバルに様々なプロダクトをリリースしてきた曽根原春樹さん。

現在はサンフランシスコにある音楽系アプリのスタートアップ『Smule』にてシリコンバレーでも数少ないPrincipal Product Managerのタイトルを持っており、『プロダクトマネージャーの真髄』を伺ってきました!

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曽根原 春樹 (Haruki Sonehara):
2001年中央大学総合政策学部卒業。文系だったものの新卒でエンジニアとしてCisco Systemsに入社。のちに転職した企業がJuniper Networksに買収され、2006年にUS本社転籍を機に渡米。その後プロダクトマネージャーに転身。Viavi、OoyalaなどシリコンバレーのIT企業を経て、現在はソーシャル音楽アプリを配信するSmuleにて、Principal Product Managerとしてグローバルにプロダクト開発を指揮している。 [Twitter: @Haruki_Sonehara, はてブ: Quest PM]

世界で使われる音楽アプリのPM

編集部:早速ですが、今ってどんなことをされているんですか?

曽根原さん:僕は今Smuleに入って1年ぐらいになるんですが、その中でプリンシパルプロダクトマネージャーとして「いかにアプリを多くの人に使ってもらって収益を増やすか」というグロースの部分を担当してますね。

編集部:先日ご寄稿頂いた記事で「PMにはパイオニア、グロースハッカー、プラットフォームビルダーの3タイプある」と書いてありましたよね。

曽根原さん:そうですね。その分類でいうとグロースとプラットフォームビルダーを兼任している感じです。特に僕が担当しているのはSmuleのソーシャルカラオケアプリなんですが、このアプリはもう世界180カ国ぐらいで使われていて、マンスリーアクティブユーザーが5000万人以上いるんですよ。

世界中のユーザーたちとコラボできるのが特徴

Smuleは米ビジネス誌 Fast Company の Most Innovative Companies 2018 音楽部門 で世界第5位にランクされている。

編集部:すごい、そんなにいるんですね!

曽根原さん:特にプレゼンスでいうと東南アジアが非常に大きくなっていて、いかにもっとユーザーを集めてエンゲージを高めるかというのが一つのテーマなんです。なので、そのためにPMとしてどんな機能を入れなきゃいけないのか、どういった仕組みを組み込めば良いのかということをやってますね。

あと、僕はどちらかというとインフラ側から上がってきた人間で、例えばインドやインドネシアに行くと、日本やアメリカでは当たり前に繋がるWiFiとかモバイル回線が繋がりづらかったりするんです。

だから、そういう環境下でもちゃんとアプリが快適に使えるようにするためにはどんな仕組みを作らなきゃいけないかという、いわゆるコネクティビティの部分も僕の担当エリアです。

オフィスはサンフランシスコ市内の一角にある。

チーム体制とコミュニケーション

編集部:じゃあ、UIみたいなところからインフラの部分まで幅広く考えなきゃいけないわけですね。となると、チームにはエンジニアからデザイナーまでいるということですか?

曽根原さん:そうですね。いわゆるプロダクトチームというのは、PMを柱に、iOSエンジニア、Androidエンジニア、Webエンジニア、サーバーサイドエンジニア、デザイナー、QA、データサイエンティストといった全部で8種類の人たちが集まった集団なんです。

編集部:そうすると、コミュニケーションの量も多くなって大変じゃないですか?

曽根原さん:結局、色んなプロフェッショナルが集まって仕事をしているんですよ。そうすると、例えばデザイナーにはデザイナーのレポートラインがあって、開発エンジニアには開発エンジニアのレポートラインがあって、彼らには彼らのゴールがあるんです。

パフォーマンスレビューとかもそうですね。もちろん、それがプロダクトと結びついていればいいんですが、ちょっとずれてたりすると、ある日ある時、本来集中しなきゃいけないこととは違うことをやりだしたりする人もいるんです。

だから、そうならないようにPMが「今はこれをやってください」とか「今これをやらないと、このタイムラインに間に合いません」みたいな「現在地がどこで、行きたいところがどこか」というのを常に説明して見せていくんです。なので、そういった部分は気をつけてますね。

編集部:じゃあ、曽根原さんがロードマップやマイルストーンみたいなものを作って、メンバーにはそれに沿って動いてもらうわけですね。とはいうものの、各個人にプライオリティがあるわけじゃないですか。そことチームのプライオリティはどうマッチさせていくんですか?

曽根原さん:そこは会社にもよるんですが、Smuleの場合はそのプライオリティ付けが全てPMに任されてるんです。なので、例えばPMが今週やるべきことはこれみたいなテーマを決めて、メンバーたちは基本的にそれに沿ってやっていくという感じです。

編集部:PMがみんなのベクトルを揃えていくと。ちなみに、そういった中でコミュニケーションエラーって起きたりしないんですか?

曽根原さん:何度かありましたね。僕の説明の仕方が甘かったり、ちゃんと理解してるかを確認してなかったり、もしくは向こうが勝手に解釈して本来やらなくていいことをやり始めちゃったり…そういうこともあるので、出来るだけクリアにハッキリと伝えることは大事ですね。

壁にはメンバー同士で感謝を伝えるボードがあり、
曽根原さんの名前も発見!

現地の文化を理解することが大事

編集部:世界180カ国で展開しているということは、開発時に多様性や異文化の理解も大事になると思うんですが、そこで何か気を付けていることはありますか?

曽根原さん:例えば、5月から先月半ばまでイスラム圏ではラマダンという断食の期間が続いていましたが、その時はそういう人たちを尊重したマーケティングの打ち方とかビジュアルデザインになるように気を付けていましたね。

あとは、180カ国ほど展開していると、やはり全て個別に対応するのは無理なので、ある程度国にプライオリティを付けてやってます。どの国を最初のターゲットにして、二番目はどこで、三番目はどこみたいな。

編集部:今伸びているのが東南アジアということは、そういったところにプロダクトマーケットフィットというか、向こう側の文化も加味してやっていくということですか?

曽根原さん:そうですね。東南アジアというのはインドとかインドネシアのことですが、ただアメリカ流を押し付けるだけではダメなので、ローカライゼーションというのは大事ですね。

編集部:そこはどうやっていくんですか?

曽根原さん:そこは現地でコントラクター (契約社員) やコンサルタントなど色んな人を雇って、現地の生の声を吸い上げられるような体制を作ってますね。あと、うちはコミュニティを作っているソーシャルな会社なので、インド人のユーザーのコミュニティがあったりするんですよ。

いわゆるFacebookページとかなんですけど、そういうところでユーザーがどういうフィードバックをしていて、どんな音楽が流行っているのかなどは見れるので、そういうのを見ながらローカライゼーションしていく感じですね。

編集部:そこは現地の人に現地の声を吸い上げてもらうということですね。ちなみに、アプリ自体は国によって違うんですか?

曽根原さん:大きくは変わらないですけど、コンテンツは国に根差したものを提供してますね。例えば、インドのユーザーに中国の曲ばかり流しても意味ないですからね (笑)

同様に、日本のユーザーにアメリカのコンテンツばかり流しても日本人はそっぽを向くので、ローカライズされたコンテンツというのは非常に大事です。

幅広い観点が求められるPM

編集部:PMってアプリを開発・発展するだけじゃなくて、経営者側の意図も汲み取らないといけないと思うんですが、そこはビジネスサイドとコミュニケーションを取りながらプロジェクトを進めてるんですか?

曽根原さん:そうですね。BizDev (ビジネス開発部) とかは「こういうサードパーティがあって、一緒にこれやったら伸びるかもしれない」みたいな話を持ってくるんですが、それを本当にやるやらないはPMの判断なんです。

編集部:裁量権はPMが持っていると。

曽根原さん:そうです。おそらく大抵のシリコンバレーにある会社はそうだと思います。とはいうものの、彼らの意見を無下にすることもできないので、うちではビジネスユニットの外側から来るリクエストを裁く別のチームがいるんです。

あと、何をどの順番にやっていくかというプライオリティを振り分けるPMがいて、そういう人たちと話し合いながら決めていくという感じですね。

編集部:プライオリティづけはPMにとって会社のリソースを振り分けるための大事な役割なんですね。ただ、シリコンバレー近辺だとエンジニア上がりのPMが多いから、ビジネスのことはあまり分からないという人もいると思うんですが、曽根原さん自身はそこに関して苦労されなかったんですか?

曽根原さん:ここは僕がどうやってPMになったかにリンクしているんですが、ご存知の通りPMって色んな観点を理解してないといけないんですよ。そして、僕もエンジニアから上がってきた人間なので、最初はマーケティングの観点とかデザインの観点がすごく弱かったんです。

でも、PMになろうとした時に、色んな観点で物事を捉えられないとマズいと思って、色んなコースを取りまくったんです。それで慣らしていったという感じですかね。

編集部:そのコースというのは何ですか?

曽根原さん:例えば、スタンフォード大学が提供しているコースとか、MITが提供しているコースとか、いわゆるプロフェッショナルエデュケーションとかエグゼクティブデュケーションと呼ばれるものです。

ああいうコースを沢山とって、出来るだけエンジニアの世界で閉じないで、違う観点を取り入れたり、違うエリアを勉強するように心がけてます。

編集部:たしかに、曽根原さんの経歴すごいですよね!スタンフォードだったりMITだったり。

過去には数多くのコースを修了されている [参照: LinkedIn]

曽根原さん:シリコンバレーのPMの世界って結構学歴が優先されることもあるんです。例えばAmazonだと露骨にMBAホルダーを募集していたり。逆に僕はそういうのを持っていないので、違う戦い方をするしかないんです。

実際、MBAを持っているからといってデザインが強いわけでもないですし、SQLのクエリが書けるわけでもないですよね。だから、逆にいうと違う観点でPMの在り方を作っていくというのは結構大事で、それがPMとしての独自性に繋がったりするんです。

編集部:肩書だけでのMBAホルダーではなく、広い視野と深いスキルで独自性を極めていくということですね。

プロジェクトマネージャー ≠ プロダクトマネージャー

プロジェクトマネージャー ≠ プロダクトマネージャー

編集部:たしか曽根原さんってPMとしてコーチングもされているんですよね?

曽根原さん:そうですね。今アメリカに来て12年目になるんですけど、そのうちの半分はPMで、幸いそういった経験がシリコンバレーで積めているので、本来あるべきPMの姿についてコーチングしたりしてますね。

というのも、最近ようやく日本でもプロダクトマネージャーというポジションが出始めてきて、逆にいうとPMのあるべき姿っていうのが見えづらいみたいなんですね。

だから、そこを一緒に解決していこうということで、何社かと手を組んでプロダクトマネージメントコーチングあるいは顧問的な感じでやらせて頂いたりもしてます。

編集部:それは日本企業ですか?

曽根原さん:日本のスタートアップですね。それと、こっちのミートアップで出会った超アーリーステージのCEOとかエンジニアの人たちです。そういう人たちにPMの組織ってどうしたらいいのっていうのを色々とレクチャーしてる感じです。

編集部:ちなみに、日本では何が課題になるんですかね。例えば、シリコンバレーだとエンジニア上がりの社長が多いけど、日本だとビジネス上がりの社長が多くてエンジニアに対する理解がないからPMがないがしろにされているとかですか?

曽根原さん:僕が感じているのは、日本でPMというと”プロジェクト”マネージャーの意味合いがすごく強いように感じるんですよね。実際、”プロジェクト”マネージャーと”プロダクト”マネージャーって全く違う役割なんですよ。

まずそこをはき違えていて、プロジェクトマネージメントすることがプロダクトマネージメントすることだと思っている。これがまず大きな間違いですね。

編集部:前提が間違っていると?

曽根原さん:そうです。前提としてそもそも間違っているというのが一つと、もう一つは先ほど仰られた通りビジネス上がりのCEOの方だとあまり技術に明るくなかったりするんです。だから、そういうビジネスとテクノロジーを橋渡しできる人、最初はCTOでもいいと思うんですけど、そういう人が必要だと思っていて。

ただ残念ながらそこを上手くできる人はまだ日本に、特に日本のスタートアップの世界には少ないのかなと思うんです。

編集部:じゃあ、今やられているのは日本のスタートアップのテクノロジー側だけではなく経営者側のコーチングもしているということですね。

曽根原さん:そうですね。上の人たちに対してもコーチングをさせて頂いてます。例えば、ベストプラクティスをシェアしたり。まあ、それは企業秘密なんですが(笑)

編集部:それを知りたい方は曽根原さんまで連絡ということですね!

曽根原さん:あと、これは語りだしちゃうと止まんなくなっちゃうので、また次回にでも。

有名なアーティストに関連した名前を持つ会議室があり、
ギターの神様、Jimi Hendrixの名を冠したMTGルームを発見!

幅広い役割を持つPM

編集部:日本ではまだPM自体があまり浸透していないということで、今後PMが浸透していくためには何が大事になってくるんでしょうか?

曽根原さん:まず、PMを置くとことは、彼もしくは彼女に対してかなり大きな権限を与えるということなんです。その製品のロードマップをどうするかという会社にとっては重要な決断を彼らに任せるわけです。それを会社として賛成できるのかというのをキチンと決めないといけないんですね。

というのも、例えば我々はここで働いていて、結構ロードマップを変えたりするんですよ。で、それはどういうことかというと、本来出すべきフィーチャーが後回しになるかもしれないということなんです。そうすると、例えばマーケの人が想定していたプランと若干ずれる可能性があるんですよ。

そして、PMにはそれを理解した上で決断しなきゃいけない場面があるんです。ということは、色んな事がやり直しになったりして結構コストがかかったりするんですが、そこまで出来るのがプロダクトマネージャーなんです。

編集部:かなり裁量権を与えるということですね。

曽根原さん:あとは、例えば自分のいるマーケットなり、他社の動きなり、そういう5年後、10年後に自分のプロダクトがどうなっているべきかという未来を考えて、それを現実に落とし込めるのもPMで、それが大変なところでもあり面白味でもあるんですね。

でも、それを実現するためにはお金がなきゃいけないし、人もいなきゃいけない。それをエグゼクティブたちに「こういうプランがあって、こういう結果が見込めるから僕にやらせてくれ」と訴えることが出来るのもPMなんです。

ある意味社内ベンチャーみたいな動きができるんですね。だから、会社側からするとそれ相応の人とお金をPMにつぎ込むことになるので、日本の会社だと怖気づいちゃったりするんです。でも、それをしないとプロダクトマネージャーの仕事は成り立たないんです。

編集部:では、PMが採用権、お金、人などを使いながらプロダクトを発展させていくと。

曽根原さん:採用に関してはプロダクトマネージャーの上の人間、例えばディレクターとかVP (ヴァイスプレジデント) が最終的な権限を持ったりするんですが、それでも我々現場レベルのPMもその影響力は大きいですよね。

Hire slow, fire fast.

編集部:チームを作るときに、こういう人が欲しいってあるじゃないですか。でも、実際にそういう人を見つけるのは難しいと思うんですが、そこはどうしてるんですか?

曽根原さん:これが非常に良いポイントで、それはうちだけじゃなくて色んな会社が悩んでることですね。例えばGoogleとかFacebookだったら黙ってても人が来るんですが、そうじゃない会社はどこも採用が大変なんです。

よくシリコンバレーでは「Hire slow, fire fast.」って言うんですけど、要するに「人を雇う時はじっくりで良い。でも辞めさせる時はさっさと辞めさせろ」って言われてるんです。それで血を入れ替えていきましょうと。

というのも、悪い人間が組織の中にいると本当に足を引っ張って、会社に対するネガティブなインパクトが大きいんですよね。だから採用に時間がかかるのはしょうがないけど、その人がダメだったらすぐクビにしなさいということなんです。

編集部:じゃあ、しっかり選んでもダメならすぐ切ると。

曽根原さん:そこは容赦ないですね。

編集部:実際にそうなんですか?

曽根原さん:実際にそうですね。

編集部:例えば、丸の形をした人が欲しいとして、もちろん初めからそこにフィットするのがベストですが、小さい丸だけど成長したらフィットするかもっていうこともあるじゃないですか。そこはポテンシャルを見込んで採用するということもあるんですか?

曽根原さん:そうですね。どこも100%フィットっていうのは基本的にあり得ないので、求めているものの7割ぐらいミートしていて、あと3割は成長余力を見せてくれれば問題ないです。

編集部:例えば、いきなり採用だと結構ハードルが高いから、まずはインターンで様子を見るということもあるんですか?

曽根原さん:うちも何人かインターンとかコントラクターが働いていて、彼らのパフォーマンスは見てますね。なので、非常に良ければフルタイムに変更とかもありますよ。

編集部:日本だと採用か否かみたいなイメージがあるんですが、こっちだと中間にインターンとかがあって良いですよね。それも、日本みたいに数日とかじゃなくて、数ヶ月間しっかりインターンみたいな感じなので。

曽根原さん:そうですね。そして、結構普通にキャリアパスとしてありますよ。ある程度ミッドステージやレイトステージのスタートアップになってくるとインターン枠は普通に出てくるので、そこに入る人は当然いますし、僕らも枠がある限りはウェルカムですね。

編集部:技術面ではなく性格面だと、どういった人が好ましいんですか?例えば、その場にいるだけで場が明るくなる人だとか。

曽根原さん:よくシリコンバレーではカルチュラルフィットという言い方をするんですけど、どの会社も大切にしているカルチャーがあるんですよね。例えば、Smuleだとtransparent (透明性を確保する) であることとか、honest (正直) であることといった色んなバリューがあるんですが、それがきちんと実行出来る人かどうかは見ますね。

例えば、transparentであるっていうのは、言い方を変えるとオーバーコミュニケートかどうかということです。少し喋りすぎくらいがちょうどいいんです。それくらい色んなことを喋って、情報を出してくれた方が周りとしては安心するんですよ。

編集部:何でも喋ってくれたほうが良いわけですね。

曽根原さん:例えば、面接で「こういうプロダクトがあって、1年後にこういう目標を達成するにはどんな機能を作りますか?」っていうことを聞いたりするんですけど、その時にうーんって考えて何も言わない人よりかは、これがこうだったらこうなるとか、前提条件としてはこれを考えてますみたいなコミュニケーションがあった方が僕らとしては働きやすいんです。

だから、黙ってうーんって考えて一番最後にすごいアイデアがポーンと出てくるよりは、常に喋りながら色んな道を探って、だんだん答えが見えてくるという方が我々のスタイルに合っていますね。

誰が何を出来るかを知っていることが大事

編集部:その透明性みたいなところでいうと、会社内で知識の共有であったり、勉強会みたいなこともされているんですか?

曽根原さん:毎週金曜日に社員が有志で何かを教えるっていうのをやってますね。みんなが集まれる場みたいなところがあって、そこにステージあるんですが、そこでは誰が何を教えてもいいんです。先週だったらソーシャルダンスを教えてたし。

みんなが集まれる広場: 写真手前にも大きなスペースあり

編集部:トピックは何でも良いんですね。

曽根原さん:ある人は楽器を教えたり、ある人は中国語を教えたり、僕はSQLを教えましたけど、そういうことをやってます。そういうところから、この人はこういうことが出来るんだっていうのをお互いに知って、そこからコミュニケーションが生まれるので。

編集部:その有志というのはローテーションがあるということですか?

曽根原さん:いえ、自分から手をあげてという感じで、それはいつもお昼にやるんですけど、有志のトレーニングがあるときは会社がランチを出してくれるんです。だから基本的にみんな何かしらのことをやるんですよね。

編集部:ちゃんと会社がサポートしてるんですね。そこで交流が生まれて、繋がりが出来てくると。なんだか、会社が大事にする「透明性」という文化とみんながやっていることがすごくフィットしてますね。

曽根原さん:たかだか150人ぐらいの会社なので、そもそも縦割りにすること自体が間違いなんです。それよりかは、横の繋がりを大切にして、お互いの強味を理解しあって、このシチュエーションではこの人と働いた方が良いというのをすぐ分かるようにした方が良いんですよね。

編集部:これは本で読んだ知識ですが、組織内で誰が何を出来るかを知っていることが大事だということですよね。

曽根原さん:まさにそれです!僕だけじゃなくてみんな何かしらのプロフェッショナルとしてここにいるので、みんな腕に強いものを持ってるんですよ。じゃあその強いものは何っていうのをみんながきちんと認識することはチームワークとして大事ですよね。

文系からエンジニアになった経緯

編集部:では、過去の話に移りたいのですが、もともとは中央大学の総合政策学部出身じゃないですか。でも新卒ではCiscoのエンジニアになってますよね。これは何があったんですか?

曽根原さん:総合政策学部という学部ではあったんですが、メインでやっていたのは国際関係学だったんです。だから、それもあって最初はエンジニアではなく、むしろ外交官とか国際公務員を目指してたんです。でも、その試験に失敗しちゃって…

それでどうしようかと考えていたときに、僕サッカーが大好きなんですけど、僕とほぼ同じ世代に中田英寿がいて、彼がイタリアのペルージャというセリアAのクラブに移籍したんですね。

そして、彼はデビュー戦で2ゴール叩き出したんですよ。これはサッカーファンにとって衝撃的なんです、本当に。あのカズでさえシーズン通して1ゴールしかできなかったのに、中田は1試合目から2ゴール叩き出したと。

それをやってのけたというのが、当時の僕には物凄く衝撃的で、めちゃくちゃカッコいいなと思ったんです。それがスキルを身に着けて世界で勝負するというスタイルに目覚めた瞬間でしたね。

でも、僕はサッカーの世界には行けないので、何か違う分野で同じことが出来ないかと考えて辿り着いたのがITの世界だったんです。それで、ITで世界と勝負するならエンジニアが一番良いかなと思い、そっちにピボットしたわけです。

編集部:ただ、実際エンジニアになるためにはかなり勉強が必要じゃないですか。苦労とかはなかったんですか?

曽根原さん:今でこそ笑い話ですが、当時はIPアドレスのアの字も知らなかったんです。なのにCiscoに入ってますから、本当に良く入れたなって思います(笑)

編集部:気合で入ったということですか?

曽根原さん:もちろん色々と準備はしてベストな状態で臨みましたが、結果的には縁があったという感じですね。とはいうものの、大学時代に情報処理数学という分野が合って、統計学とかは勉強してたんですけどね。

あと、『Mathematica』という数式の結果をビジュアライズしてくれるパソコンのソフトがあって、それをやってたので知識がゼロではなかったんです。

編集部:ベーシックなところは勉強していたと。

曽根原さん:ある程度ですけどね。2001年当時はインターネットがちょうど出始めて、Yahoo! JAPAN、Sun Microsystems、Oracle、Ciscoといったシリコンバレーの企業が彗星のごとく日本に現れたんですよ。それで、なんか面白そうだなという感じで。

もちろんめちゃくちゃ勉強しましたし、それ以前に自分で腕を磨いて世界で戦いたいっていう気持ちは強かったので、大変でしたけどなんとかやりきりましたね。

編集部:自分の目標が明確だったから、辛くはなかったわけですね。

シリコンバレーに来た経緯

編集部:その後、Juniper Networksに転職されて、シリコンバレーに来たんですか?

曽根原さん:実はCiscoとJuniper Networksの間に1つあって、あるシリコンバレーのスタートアップが日本でオフィスを作るという話がたまたまヘッドハンター経由で僕のところに来て、僕はその技術周りの社員として入ったんです。

それで、当時僕の直属の上司は日本法人の社長だったんですが、SEとしてのレポートラインはシリコンバレーにあって、僕は彼に対して常々シリコンバレーに行きたいとアピールしてたんですよ。

でも、彼は「まだうちはスタートアップだからお金ないよ」とか言われてて。いわゆる「こっちに来たいなら、その分稼げや」という話なんですが(笑)

そんなこんなでビジネスも伸びて、そのスタートアップがJuniper Networksに買収されて、ある日僕の上司だった人が僕のことを覚えててくれて「Haruki、ポジション空いたぞ」みたいな連絡をくれて。

それはグローバルテックサポート部隊だったんですけど、とっかかりは何でもいいと思っていたのと、まずは行くことが大事だと思っていたので渡米を決断しました。

編集部:ビザもサポートしてもらったんですか?

曽根原さん:そうですね。ビザも会社にサポートしてもらって。

英語は大丈夫だったの?

編集部:来てから英語は大丈夫だったんですか?

曽根原さん:英語に関しては全く問題がなかったわけではないですが、体で覚えていったという感じですかね。面白いのが、アメリカに来た初日に上司から「君が入るポジションの前の人は英語が下手でクビになったから」と言われて、いきなり釘を刺されましたね。まあ、これは最初のご挨拶だと思って何とかやりきりましたが。

編集部:じゃあ、来る前から英語の勉強はされてたんですか?

曽根原さん:個人的に英語は割と好きな言語だったので、色々と勉強はしてました。英会話スクールに通ったり、海外旅行で現地の人と積極的に会話したり。ただ、リアルなビジネスの場で自分の英語が通用するのかというところは未知数だったので、そこはなんとかやりきったという感じですね。

編集部:ちょっとずつブラッシュアップしていったわけですね。

PMになるまでの苦労

編集部:他にこちらで苦労したことなどありますか?

曽根原さん:最初に移ったポジションは今まで僕がやっていたテクノロジーの領域だったので、技術的に大きな変化はなかったんですが、一番大変だったのはやっぱりPMに移るときでしたね。

編集部:というと?

曽根原さん:カスタマーサポートの人間がPMになろうとするとかなり大きなジャンプなんですよ。求められるスキルセットがだいぶ違うので。だから、僕はその間にテクニカルマーケティングというポジションを挟んでPMになったんです。

でも、そもそもそんなポジションがあるなんて最初は知らなかったですし、どんな経路でPMになったらいいかも分からなかったので、結構大変でしたね。

編集部:それは人に聞いたり、ネットで調べたりしたんですか?

曽根原さん:社内にいるPMとか色んなPMの人に相談して、どんな経路で行ったらいいかを見極めていった感じですね。ただ、その経路を取ったからといって必ずしもPMになれる訳ではなかったので、ある意味賭けではあったんですが。

編集部:そこはタイミングや運もありますよね。

シリコンバレーを渡り歩くコツ

編集部:曽根原さんって、シリコンバレーのIT企業をいくつか渡り歩いてるじゃないですか。その渡り歩くコツとかってあるんですか?

曽根原さん:自分の強みを何に置きたいかを常に考えながら動いた方が良いと思いますね。やっぱりシリコンバレーの会社って世界から見ても人気があるので、世界中からレジュメが届くんですよ。

なので、採用する側からすると「なぜあなたを選ばなきゃいけないの?なぜあなたが面接に来なきゃいけないの?」って感じなんです。だから、それを証明するだけの強いものがないと話も聞いてくれないし、次には進めないですよね。

編集部:それはスキルということですか?

曽根原さん:アウトプットですね。どうやってアウトプットを出してきたのかというプロセスであったり、そのポジションに必要なスキルセットをどのように磨いてきたのか、表に出してきたのかっていうのは大事だと思います。

そして、それをストーリーとして語れるのも大事ですね。そうすれば、チャンスは上がると思います。だから、自分の強みを何に置きたいかを考えて、そのためにはどんなアウトプットを出さないといけないのかということを戦略的に考えていくのが良いと思います。

Smuleを選んだ理由

編集部:ちなみに、最終的にSmuleを選ばれたのはなぜですか?

曽根原さん:CiscoとかJuniper Networksとか、前職が全てBtoBの会社だったんですよ。もちろんそれも楽しかったんですが、横目でGoogleとかFacebookを見ていたので、BtoCの方が圧倒的に成長も早いし、規模も大きいし、なんだか面白そうだなという感情が芽生えてきて。

じゃあ、そのためにはどうしたらいいかと考えていたら、ある日ヘッドハンターの方からSmuleというBtoCの会社がPMを募集しているという連絡が来て、特にバックエンド、インフラストラクチャー周りのグロースを支えるPMを募集しているということだったので、なんかフィットしそうだなと。

編集部:もともと音楽も好きだったんですか?

曽根原さん:そうですね。ピアノを弾く人間なので音楽は好きですね。

やはり、やれAIだシンギュラリティだといっても人間が音楽を好きだという気持ちはこれからも変わらないと思うんですよ。もちろん、音楽そのものは人間が弾くか、ロボットが弾くかで変わっていくと思うんですが、音楽に対する気持ち、いわゆるエモーショナルな部分は変わらないと思うんです。なので、それを会社またはビジネスとしてどうやっていくかと考えるのは非常に面白いですね。

編集部:じゃあ、そういう音楽に対する想いやSmuleの企業文化にフィットして、転職を決意したということですね。

オフィスにはピアノやドラムがあり、有名なアーティストが
オフィスに来て演奏することもあるという。

今後のキャリア観

編集部:では、今後のキャリア観について教えて下さい。

曽根原さん:2つあって、1つはもう少し日本のプロダクトマネジメントのレベルを底上げしたいですね。最近だとメルカリさんも上場されて、ようやく日本でもIT・Web系のスタートアップが認知されてきましたが、個人的にはもっと盛り上がっていいと思ってるんです。

その仕掛け人がプロダクトマネージャーなんですが、今はそのボリュームが圧倒的に少ないなというのが僕から見た日本の印象なんです。そして、そういった仕掛け人になるためにはある程度スキルや経験が必要で、そこを何かお手伝い出来たらなということでコーチングなどをやってるんです。なので、そういう活動をもっと広げていきたいですね。

もう1つは、個人的にPMという仕事が大好きなので、チーフプロダクトオフィサーみたいなPMのトップのような立場でユニコーン系のスタートアップとか、あるいは自分でスタートアップを持つなりして、世界にインパクトを与えるプロダクトやサービスの仕掛け人であり続けたいですね。

編集部:チーフプロダクトオフィサーって日本に存在するんですかね?

曽根原さん:CEOが兼任、あるいはCTOが兼任みたいな形にはなると思うんですが、PMのヘッドとして世界にもっと広く世界中で使われるようなプロダクトやサービスを主導する立場にはいたいですね。

メッセージ

編集部:では最後に、海外で挑戦したいと思っている方に何かメッセージをいただけませんか?

曽根原さん:特に海外に行くとなると、やれ語学だカルチャーだと考えて尻ごみしてしまう人がいると思うんですが、僕は「行っちゃってから考えましょう」って言いたいんですよね。

もちろんある程度スキルを積んで準備しなきゃというのは事実ですが、スキルも実力もあるのに動き出さないのは非常にもったいないなと。たぶん日本でずっと働くよりも外に出た方がその人の市場価値ってグンと上がると思うんですよね。

だから、是非もっと気軽にチャレンジしてほしいというのはありますし、自分が常々コンフォートゾーンから一歩出たところに本当に成長できるスペースがあると思っているので、いかにそのホワイトスペースに踏み出していくかというのは大事なのかなと思います。

編集部:たしかに、一歩踏み出してみるというのは大事ですよね!

曽根原さん:例えば、語学に関しても、エンジニアの世界で要求される英語ってそこまで高くないんですよ。もちろん、PMがエグゼクティブにプレゼンするときの英語は結構ハードルが上がるんですが、単にエンジニア同士の会話ならそこまで英語力も求められないと思うんです。

というのもコーディングって基本的に英語でされてるじゃないですか。だから、それが共通の言語みたいなものなので、あとは正しく伝える方法論さえ分かっていれば、ある程度成り立つんです。そういうところから成功体験を積み重ねていけば、大きく花開くチャンスは十分にあると思いますね。

編集部:日本のエンジニアって優秀な方が多いって聞きますよね。

曽根原さん:そうなんですよ!非常にもったいないと思います。例えば、『Glassdoor』とか見れば分かりますが、シリコンバレーのエンジニアってすごく給料高いんです。でも、だからといってスキルで日本のエンジニアが負けているかというとそうではないんです。

だったらその仕事に対してちゃんとお金をもらったって良いと思うんですよね。だから、そういう場とチャンスがあるんだったら、僕は積極的にチャレンジしていくべきだと思います。

編集部:その方が視野も開けるし、市場価値も高まると。きっと日本にいて一歩踏み出そうかと迷っていたエンジニアの人は勇気がもらえたんじゃないかと思います。曽根原さん、本日はどうもありがとうございました!

終わりに

今日は、サンフランシスコにある音楽アプリ系のスタートアップ『Smule』にてプリンシパルプロダクトマネージャーを務める曽根原春樹さんにお話を伺いました。

日本ではあまり馴染みのないプロダクトマネージャーの役割や重要性についてのお話はすごく新鮮で、イノベーションの聖地とも言われるシリコンバレーを形成するプロダクトがいかに生み出されているのかを垣間見たように思います。

僕もそんなイノベーティブな集合体の一部として、世界をより良くしていけるようシリコンバレーで挑戦し続けていきたいと思います!

(書き起こし: 中卒エンジニア / 編集: 中屋敷量貴)