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サンフランシスコで起こるおにぎりブーム、火付け役が語る #全米500店舗展開への勝算

インタビューIT系Onigillyサンフランシスコスタートアップ起業家飲食系

サンフランシスコで密かに沸き起こる「おにぎりブーム」。安く、美味しく、手軽に食べられるところが、人種を超えて広く受け入れられている。

そんな「おにぎりブーム」の火付け役となったのが、大人気おにぎり屋チェーン『Onigilly』でCEOを務める金松孝司さんだ。

もともとはIT業界のプロマネとしてアプリ開発に携わっていた金松さんだが、「アメリカでも美味しいおにぎりが食べたい」という想いから2008年にOnigillyを創業。今でこそ大人気のOnigillyだが、その裏には「実家の売却・家族の帰国」という壮絶な過去があった。度重なる困難にもめげず、ただひたすらに夢を追い続ける男の『全米500店舗展開への勝算』に迫る!

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金松 孝司 (Koji Kanematsu):
起業家。2001年に早稲田大学第一文学部を卒業。卒業後、日本のIT系ベンチャーで事業マネジメントに従事し、2003年に東京でIT関連のスタートアップにジョイン。2005年にサンフランシスコでモバイル系アプリの開発会社を立ち上げ、2008年に『Onigilly』を創業。現在に至る。

サブウェイを超える

連日長蛇の列ができるほど人気の『Onigilly』

編集部:今はCEOとしてどういったことをされているんですか?

金松さん:今は次の10年を見据えた戦略を考えていて、その一環でリサーチ、協力会社の開拓、資本政策、幹部育成、ストックオプションのプランニングなどをやってます。あとは、定期的に幹部メンバーとミーティングして戦略などをシェアしてますね。

編集部:今はサンフランシスコに4店舗ほど展開されてますよね。

金松さん:そうですね。ただ、僕らの目標がOnigillyを全米に500店舗展開して全米1のチェーンを作ることなので、今やってる4店舗っていうのはあくまでそのプロトタイプなんです。

編集部:500店舗ですか?しかも、4店舗がプロトタイプ?

金松さん:今、サンフランシスコのFinancial Districtという狭いエリアに4店舗とも密集しているんですが、それって普通に考えたら勿体無いやり方なんですよでも、僕らはその4店舗のうち1店舗を仮のセントラルキッチンにして、そこから他の3店舗におにぎりの具材を配送することでミニチェーンみたいにしてるんです。

金融街に4店舗が密集。どの店舗も高評価!

編集部:チェーン化するためのベータ版みたいな感じなんですね。

金松さん:だから、そのセントラルキッチンとなる店舗 (Kearny) には、地下に大きな冷蔵庫があって、2階をオフィスみたいにしているんですが、周りの3店舗はすごく小さくて、あくまでそこではご飯を炊くだけという風にしてるんです。

編集部:めちゃくちゃ考えられてる!

金松さん:だから、売っているものはおにぎりなんですけど、僕自身は飲食店のオーナーだとは全く思ってなくて、僕らがやってるのはあくまでサブウェイみたいなものなんです。

編集部:あのサンドイッチのサブウェイですか?

金松さん:はい。例えば、マクドナルドとか他の大きいチェーンだったら、キッチンも必要だし、従業員のトレーニングも必要なので、初期投資に何億円というお金がかかるんですが、それがサブウェイの場合、キッチンもいらないし、誰でも簡単にできるので。

編集部:たしかに、必要なものってトースターくらいですよね。

金松さん:そして、僕らが目指しているのはああいうスタイルなんです。だから、おにぎり屋の1店舗1店舗にキッチンがあっちゃだめなんですよ。あとシェフがいないと回らない仕組みだと意味がないんです。

編集部:めちゃくちゃ面白いですね!

金松さん:今はその仕組みを最終調整してるところで、今度大きなセントラルキッチンをここ (Redwood City) に作って、今度はベイエリア内でチェーンを組んでみようと思ってるんです。そして、それがうまくいったら全米に展開して行こうという感じです。

おにぎりはいずれも2-3ドル。この辺りだと相当良心的な価格
左からひじき、高菜、鶏そぼろ

オペレーションを8割自動化

編集部:ちなみに、その仕組みというのはどういったものなんですか?

金松さん:例えば、今度パロアルトに5店舗目を出そうとしてるんですが、次の店舗からはお米の水含量とか水の浸透率を自動でチェックする炊飯器を導入するんですよね。そういうオペレーションの部分も8割くらい自動化しようとしてるんです。

編集部:飲食業界にもしっかりITを組み込んでいくわけですね。

金松さん:実はお米を炊く作業ってかなり難しくて、例えば日本人でずっとシェフをやってる人だったら、温度とか湿度を見ながら完璧にお米が炊けるんですけど、じゃあそれが30カップとかのでかい釜で、しかも日本人じゃないお米のこともよく分からない人たちが炊けるかというと、まず出来ないんですよね。

あと、朝だと時間があるから水につけて30分経ってから炊くけど、急いでると洗ってすぐ炊いちゃうということもあるし、雑にやっちゃうとあまり洗わなかったり、逆に洗いすぎちゃったりっていうこともあるんです。だから、お米を炊くのはマニュアルでやるのがすごく難しいんですよね。

編集部:たしかに。

金松さん:今は三角形のお米のパテを型を使って手で作ってるんですが、そこも今、日本の会社にひたすらパテだけを作るロボットを作ってもらっていて、それが夏くらいには来る予定なので、そうすればそこも自動化できますね。

編集部:そしたらほぼ全自動ですね!

金松さん:だから、米を炊く時のミスさえなくなれば、他にミスしようがないというか、あとは具材を乗せて包むだけなので誰でもできるのかなって思うんです。ただ、だからと言って全部を自動化すると手作り感がなくなるので、具材だけは手で乗せて包むようにしてます。

編集部:たしかに、全部自動化されてると無機質ですよね。

金松さん:具材も工場で生産されたものを卸売業者が在庫管理していて、そこも需要予測に応じてオーダーできるような仕組みが出来かけてるんですよね。

編集部:そうなると下手したらサブウェイよりも簡単になるんじゃないですか?

金松さん:有りえますね!

編集部:ちなみに、全米への展開を考えると製造などのサプライチェーンの整備も必要かなと思うのですが、そこは大丈夫なんですか?

金松さん:実は全米のサプライチェーンも3-4割くらい整っていて、そこも5-6年かけて食品メーカーと卸売業者をしつこく口説いたんです(笑) やっぱり、2店舗とかの段階では全然動いてくれないし、そもそも前金じゃないと売ってくれなかったので。だから毎回取りに行ってたんですけど。

編集部:それはつらい。

金松さん:ただ、その時から、500店舗になるからオリジナルの具材を作ってくれませんかとは言ってたんです。

編集部:その時から全米500店舗って言ってたんですね(笑)

金松さん:それで、5年くらいかかって4店舗になってやっと振り向いてくれたって感じで。だから、後半はやけになって、振り向いてくれるまで強引に店舗を増やしてました。本当は4店舗もいらなかったんですけど(笑)

編集部:プロトタイプを作るって言うと交渉力ありそうですもんね!

具を乗せて包むだけなので、誰でも簡単にできる!

お米へのこだわり

編集部:ちなみに、お米ってどうされてるんですか?日本から輸入してるんですか?

金松さん:お米はカリフォルニア米を使っていて、お米の農家に五分づき米にしてもらってます。前は小さい農家さんに供給してもらってたんですけど、米が特殊すぎて、生産が追いつかないんですよね。100%白米とか100%玄米だったら常に在庫があるんですけど五分づき米でしかもオーガニックっていうすごく…

編集部:マニアックな(笑)

金松さん:アニアックすぎて(笑) あと面白いのは、アメリカ人には白米のおにぎりがあんまり受けないんですよ。米の塊みたいなイメージがあるらしく。

編集部:そこは日本人とは感覚が違うと。

金松さん:メインがあって、横にちょっとご飯があるぐらいなら良いらしいんですけど、米が、しかも白米がどーんってくると引いちゃうらしいです。

編集部:まさに文化の差ですね。

金松さん:だから、僕らはオーガニック玄米で、しかも五分づきだから食べやすくて消化もしやすいみたいな健康アピールをしてるんです。それで、五分づきという比率にたどり着いたのも2年くらい前なんですよね。その前は三分づきだったり、もち米と玄米を混ぜたりしてたので。

編集部:お米だけでも色々と試行錯誤したと。

金松さん:色んなブランドのお米を使ったり、色んな機械を使ったりしました。実はOnigillyを創業した直後のテント時代に100万円くらいする機械を買っちゃったんですが…

編集部:え、買っちゃった?

金松さん:三角形のパテを作る機械を買ったんですよ。しかも友達にお金を借りて。でも、もち米と玄米でやってたらくっついて動かなくなって…

編集部:まさか壊れたんですか?

金松さん:壊れてはないんですけど、結局使えなくなって、返品もできなくて…結局手で作ってみたいな。

編集部:それは、、、ちなみに、お米というところで気になるのが、こっちのお米って美味しいんですか?

金松さん:けっこう美味しいですよ。やっぱり、日本のはしっとりしてて美味しいんですけど、高いですよね。あと、例えば〇〇県産のコシヒカリみたいなものを輸入してきたとしても、日本人じゃないとそのブランドの良さって分からないじゃないですか。

だから、もし僕が日本人のこだわりあるシェフだったら、そこにこだわってしまってフードコストも高くなってたと思うんですが、僕らはもうそこにはこだわらないと決めたので。

編集部:カリフォルニア米も十分美味しいから、そこは日本産にはこだわり過ぎずにやっていこうということですね。あと、今後全米に500店舗展開するとなるとお米の生産が追いつくのか気になるんですが、そこは大丈夫なんですか?

金松さん:大丈夫ですね。前はそこがネックだったんですけど、キッコーマンの子会社にJFCという全米最大のネットワークを持つ日本食材のディストリビューターがいて、そこの本部が動いてくれたので。普通はいきなり本部が動くってありえないらしいんですが。

編集部:すごい!それ、どうやって口説いたんですか?

金松さん:そのJFCの担当者がすごく熱い人で、その人がめちゃくちゃ動いてくれたんです。Onigillyが潰れたらクビになるんじゃないかくらいの勢いで。

編集部:それはやばい(笑) それくらいOnigillyのファンだったんですね。でも、いかに人を巻き込めるかっていうのは大事ですよね。

金松さん:そうですね。僕は最初からかなり本気で、全米1のチェーンになると思っているんですが、昔はそう思ってくれる人がいなくて、今はちょっとずつ信じてくれる人が増えてきたのかなと思います。

Onigillyのメニュー: 全部食べた結果、高菜、蓮根、味噌ナス、
そぼろ、うなぎがオススメ。うなぎが本当に美味しい!

競合はバナナとリンゴ?笑

編集部:こっちだと寿司とかラーメンが人気ですが、やはりお米というところでいうと競合は寿司になるんですかね?

金松さん:寿司とかPoke (ポケ) ボウルが出てきて、みんなが「競合いっぱい出て来てるね」みたいなことを言うんですけど、たぶん競合じゃないんですよね。

ポケボウルとはハワイ料理の一種で海鮮丼のようなもの

編集部:競合じゃない?

金松さん:今、Onigillyってサンフランシスコに4店舗あって、だいたい隣とか向かいのお店が寿司屋とかなんですけど、お客さんが減ったかというとむしろ増えたくらいなんです。だから、たぶん僕らの競合はパワーバー、バナナ、リンゴとかだと思うんですよね。

編集部:どういうことですか?(笑)

金松さん:アメリカだと、それ以外にさっと食べられるものないじゃないですか。

編集部:たしかに、日本にいた時はコンビニでおにぎりとか買って食べてたけど、こっちに来てからはそれがバナナとかリンゴになりましたね…

金松さん:でも、おにぎりだったら片手で食べられるから、空いた手でマウスとかスマホも使えるし、運転だってできるんです。だから、おにぎりに変わるものって実はないんですよね。

編集部:言われてみるとそうですね。ちなみに、顧客としてはどういう人が多いんですか?

金松さん:20-40代くらいの健康志向な人が多くて、若干女性が多いですね。あと、日本人とかアジア人が多いわけでもなく、色んな国の人に人気です。

編集部:じゃあ、人種や国境を超えて受け入れられていると。ポテンシャルがありそうですね。

店内は開放的でカラフルな色調となっている

投資家の顔ぶれが期待値の高さ

編集部:ちなみに、今って投資は受けてるんですか?

金松さん:投資をもらい始めたのも割と最近なんですが、少しずつ受けてます。投資家はほぼ全員IT関連の人で、例えばFacebookの初期のリードプログラマーで、Facebook Japanの立ち上げもやったようなすごいお金持ちの人であったり。

編集部:Facebook Japan?

金松さん:はい。香港系アメリカ人の方で、日本に2年住んでて、いつもおにぎりを食べてたらしいんですけど、アメリカに帰って来たらおにぎりがなくて自分でやろうかと思ってたくらいの人で、そんな時にOnigillyを見つけて「なんて素晴らしいんだ、協力させてくれ」って。

編集部:同じ課題を抱えていたと!

金松さん:あとは、あのモバイルゲームと野球チームで有名な会社の元会長であったり。

編集部:Dから始まりそうな…気がしますね。

金松さん:あと食品業界だと、すごく大きい飲料会社のファウンダーとか。

編集部:そうそうたる顔ぶれなわけですね。

金松さん:ただ、ありえないと思うんですよ。そういう普通だったら会ってもらえないような人たちが、面白がって協力してくれるっていうのが。たぶん僕らがやっていることがあまりにもマニアックすぎて、そういう人たちの心をくすぐってるのかなって思います。

編集部:たしかに、おにぎり屋で全米500店舗作るなんて聞いたことないです!

Onigilly、誕生

編集部:もともとはITの会社で働いていたということですが、そこからOnigillyを立ち上げるまでの経緯を教えていただけませんか?

金松さん:元々はモバイルでシリコンバレーを制覇しようと思ってたんです。当時、サンフランシスコでiPhoneの初代機に触れて、これは来るなって思ったので。それでモバイル用の占いサイトを作ったりしてたんですが、なんかよく分からなくて、、、自分が何をやりたいのか。

編集部:どういうことですか?

金松さん:おそらく起業することが目的になってて、中身は何でも良かったんですよね。だから、自分の本当にやりたいことがよく分からなかったんです。

編集部:手段の目的化が起きていたと。

金松さん:それで、たまたまニューヨークに出張した時に「OMSB」っていうおむすび屋さんを見つけて、「ニューヨークすげー、おにぎりがある」って感動して。

編集部:僕もたった今、「おむすびー」とかやったら流行るかなって心の中で思ってました(笑)

金松さん:それで、アメリカで出会った親友に長谷川幹くんっていう人がいて、彼とはいつも夢を語り合ったり、勉強会をするような仲なんですが、そんな彼がある日「カフェをやりたい」って言い出したんです。だから、「カフェはそこら中にあるから、おにぎり屋はどう?」って。

それで、「じゃあ分かった!」って言って、初めは彼がメインでやってたんです。僕もFounderではあるんですが、他の仕事があったので初めはサポートみたいな感じでやってて、でもやってるうちにだんだん自分も熱くなってきて。

編集部:熱が入って来たわけですね。

金松さん:当時、幹くんがバイト先のカフェのオーナーにお願いして、レジ横でおにぎりを売らせてもらってたんですが、普通に白人の女性がそれを買って、コーヒーを飲みながら、しかも歩きながら食べてるのを見てこれは熱いなって。それでビビっと来たんです。

編集部:これは来るみたいな。

金松さん:あと、幹くんの友達のシェフが給食ビジネスをやりたいということで、現地の学校に給食を見に行ったことがあるんです。そしたら、日本人の子供たちはお母さんが作ったお弁当とかを食べてたんですが、他の子供たちはピザとかポテトとか、良くてバナナしか食べてなくてかなりショックを受けたんです。

編集部:良くてバナナって…

金松さん:その時、今まで自分がスタートアップで学んだビジネスのこととか、セブンイレブン系の人たちに教わったサプライチェーンの知識とかをフル活用して、これならおにぎりでもいけるんじゃないかっていうイメージが出来たんですよね。

それで、誰に見せるわけでもないけど、自分用のカッコいい企画書を作って、それをみんなに見せて「これ熱いねー」みたいな感じで自分を盛り上げて。

編集部:それで本格的にOnigillyを展開して行ったと。

女性しか入れないプログラムに採択?

編集部:なんでも女性しか入れないインキュベーションプログラムに採択されたとか?

金松さん:そうですね。「ラ・コシーナ」っていう移民女性を対象にフードビジネスの起業支援をするNPOがあって、ものすごく倍率が高くて、そもそも男性は受け付けてなかったんですが、企画書を見せて、おにぎりを持って行って、500店舗いくからって言って。

編集部:その時から500店舗って言ってたんですね(笑)

ラ・コシーナ」は移民女性向けのフードビジネス支援組織

金松さん:それで、僕はあまり英語が喋れなかったから、プレゼンでは幹くんに喋ってもらって、僕も一言くらい「アメリカのファーストフードは不健康なものが多いから、本当になんとかしないといけない。だから、ここで僕らを選ばないとアメリカが困る。」って。

編集部:え?アメリカが困るって言ったんですか?(笑)

金松さん:だから、僕らに力を貸してくれって感じで。それでアジア人で初めて、かつ男性で初めてそのプログラムに採択されたんです。

編集部:エピソードが濃すぎる!じゃあ、そのプログラムを卒業した後、実際に外で売り出してっていう感じですか?

金松さん:そうですね。でも当時、80年代のボロボロのピックアップトラックを使ってたので、イベントの時とかにお茶のボトルをいっぱい積んでると、重すぎて止まれないんですよ。なので、何回も赤信号の交差点に突っ込んでました。

編集部:危なすぎる…

金松さん:あと、カートで売ってたらいきなりドラッグ中毒の人に絡まれたりとか。もうむちゃくちゃなんですよ。怖いし、邪魔されるし、寒いしで。しかも、1日ずっとやって儲けた80ドルが盗られたりとか。1個しか売れないなんてこともありましたね。

編集部:それは辛い…

金松さん:本当にもう。

編集部:場所はテンダーロインですか?

テンダーロインは市内でも有名な治安の悪い地区

金松さん:テンダーロインみたいな治安の悪いところだったり、フェリービルディングのテントがいっぱいある後ろで見えないところだったり。食べてもらえたら嬉しいんですけど、もうYelpにボロクソ書かれて。「あそこの寿司は寿司じゃない」とか、日本帰りのアメリカ人に「日本のセブンイレブンのおにぎりの方がうまい」とか。

編集部:そもそも寿司じゃないっていう。

金松さん:でも、そういうのは想定してたんです。たぶん、受け入れられるまでしばらく時間がかかるだろうなって。だから、初めの頃は余ったお米を食べたりして、すごく質素な生活をしてましたね。あと、奥さんがフルタイムで働いていて、安定した収入があったからなんとか食っていけたっていう感じです。

編集部:苦しい時期があったわけですね。

実家を売り、家族が帰国、そして

編集部:ちなみにOnigillyを始めた時ってビザは大丈夫だったんですか?

金松さん:前の会社の時は駐在員ビザ (L-1ビザ) でアメリカに滞在していたんですが、ビザを更新する際にその会社をクローズしたので、Onigillyを初めた時はビザがなかったんです。でも、そのままアメリカにいると不法滞在になるということで、一旦日本に帰って学生ビザを取ってまたアメリカに戻ってきたんです。

それでビザどうしようって困ってたら当時付き合ってた彼女、今の奥さんがもともとグリーンカード (永住権) を持っていたので、ビザサポートしてもらって、、、それで何とか生き残れたっていう感じです。

編集部:奥さんのコミットが半端じゃない(笑)

金松さん:その時、奥さんにめちゃくちゃ迷惑かけてるんですよね。2年前とか、ディレクター経験のある人を雇ったがために生活費が足りなくなって、家族を日本に送ったし。

編集部:どういうことですか?

金松さん:ちょうどその頃、家を買ったんですよ。奥さんが働いてる間じゃないとローンが組めないからってことで。でもローンが月4500ドル (45万円) とかですごく高いんですよね。ただでさえローンでギリギリなのに、なんか気付いたらその人まで雇っちゃってて。

編集部:雇っちゃったって…

金松さん:その人がいてくれたら良いなーって思ってたら、なんか雇っちゃってて。それで、これはまずいということで、家賃やその他養育費やら健康保険料やらの生活費を節約するために奥さんと子供二人を日本に送って、僕はその買った家の地下に住んで、上は全部貸し出してって感じで。

編集部:色々と凄すぎてどこから突っ込めば良いのか分かんないです…

金松さん:あと、僕の両親が島根に住んでたんですけど、その生まれ育った実家も売ってもらって、奥さんと子供二人と一緒に千葉にある3LDKのちっちゃいスペースに1年半くらい住んでもらって。

編集部:それ、親は理解してくれたんですか?

金松さん:親も「分かった」って。

編集部:巻き込み力がすごい!

金松さん:それで、やっと先が見えてきたということで、去年 (2017年) の10月くらいから家族もアメリカに戻ってきました。

編集部:なんだか本気度が違いますね。

金松さん:ここまでならいけるっていうところまでは自分でなんとかしたいと思っていたので、資金調達にも頼りたくなかったんです。特に今はまだベータ版なので。

正直、奥さんと2人で2店舗経営するとかならそれなりに良いお金になるんですが、僕らはもう500店舗って言ってるので、システムとか人に半端なく投資してるんですよね。

編集部:すべて仕組み作りに投資していると。

金松さん:だから、4店舗だったら全然いらないチェーン用のアカウンティングシステムとか、そんなものにばかりお金をかけてるからお金がないんですよ。なので、投資をもらい始めたのも割と最近なんです。

編集部:ハードウェアのスタートアップみたいに、後でとんでもないJカーブが来そうですね!

おにぎりネイティブ、到来

編集部:今後の展開というところで、今年パロアルトにもう1店舗出そうとしていますが、何年後に500店舗を達成する予定なんですか?

金松さん:たぶん今から10年15年後くらいには500店舗になってるんじゃないかなって思います。ただ、機械の仕上がりとかオペレーション、クオリティコントロールみたいなところで細かい不確定要素が多いのでなんとも言えないですね。

編集部:そこはその時の状況によると。エリアに関しては、どこに展開していこうとかってあるんですか?

金松さん:おそらく次の5年10年はシアトル、ニューヨーク、ロサンゼルス辺りの都市部ですかね。都市部にいる人だとある程度日本食にも馴染みがあると思うので。そのあと田舎でもサブウェイのようにおにぎりを食べるみたいなのが来るのかなって思ってます。

編集部:なるほど。

金松さん:アメリカのハイウェイってハンバーガーばっかりじゃないですか。だから、あそこにおにぎりがあるのが夢ですね。

編集部:じゃあ、In-N-Outに行くかOnigillyに行くかの2択の世界が来るかもしれないと。

In-N-Outはカリフォルニア発の人気ハンバーガーショップ

金松さん:結構、あり得ると思うんですよね。最近読んだ記事で、小学校に寿司を持ってくる子供が多いって書いてあって、そういうことを言われるということは、若い世代ならおそらく先入観なく初めからおにぎりもありだってことだと思うので。

編集部:スマホネイティブならぬ、おにぎりネイティブですね。

金松さん:だから10年後のおにぎりって、もう半端ない市場になってると思うんですよ。

編集部:今ですら人種関係なく、色んな人に受け入れられてるわけですもんね。ちなみに、州をまたぐと州法も違うからオペレーションとかクオリティを保つのも大変になるのかなと思うのですが、そこは大丈夫なんですか?

金松さん:やっぱり、ずっと考えた結論がサブウェイで、具材は基本的に工場で作るので味は一緒であとは解凍するだけですし、お米は基本的に機械が自動で炊いてくれるので、みんな完璧に炊けるんです。

編集部:先ほど仕組み化のところで仰ってましたよね。もうそれだけ簡単だったら「フランチャイズやらせて下さい!」みたいな人って出てこないんですか?

金松さん:かなり問い合わせはあるんですが、やっぱり安易にはいきたくないんですよね。おそらく安易に行くと痛い目にあうと思うので。だから、まずは今年中に仕組みを完璧にして、オペレーションの自動化、クオリティコントロール、具材の工場生産とかを全部クリアしたら、フランチャイズのプログラムも動いていこうという感じです。

編集部:そこは慎重に行きたいと。

金松さん:よくコピーされるって言われるんですけど、たぶん出来ないんですよね。単独でおにぎり屋やってもうまくいかないし、すごく売りづらい商品なので。寿司とかに比べて安いし、ちょっとでも米が多いとすぐクレーム来ますし。

それならポケボウルとか寿司ブリトーやってた方が高く売れるし良いじゃないですか。だから、実際に自分でやってみて、こんなもん誰もやらないよなっていうのが分かったんです。

編集部:いざやろうとすると難しいわけですね。

金松さん:そう思います。

オフィスにある「Onigilly Visionary 500 MAP」

大事なのは「適材適所」

編集部:今後、店舗を展開していく上では現地採用も大事かなと思うのですが、そこはどうお考えですか?

金松さん:実は僕、アメリカ人のマネジメントがいまいちよく分からない、、、というか、うまく出来なかったんですよね。だから、もうそこはアメリカ人に任せてます。

編集部:じゃあ、今はオペレーションとかを見るアメリカ人のトップがいると?

金松さん:そうですね。彼が全体のオペレーションを見て、僕はどうビジネスを前に進めて行くかっていうのを考えてます。

初めは僕もオペレーションをやってたんですけど、途中で自分があまりうまくないっていうのに気付いて、そうなると時間もかかるし、ストレスも溜まるし、人も辞めちゃうしっていうことで、僕はやらないって決めたんです。

編集部:そこは得意な人に任せようと。

金松さん:すごくぶつかりますけど、それでもすごく助かってます。やっぱりアメリカだと感覚が全然違うんですよね。例えば、アメリカの場合、僕からすると「ちょっときついんじゃない?」っていう言い方も多いんですが、こっちだとある程度厳しくいかないといけないらしくて。僕の言い方だと優しすぎるって言われるんです。

編集部:甘くなっちゃうわけですね。たしかに、日本人同士だと「言わなくても察するよね」っていうのがあるからあまり言葉にしないけど、こっちだと良くも悪くも察するみたいなのがないですもんね。

金松さん:そうですね。だから、そこはそういったことが得意な現地のアメリカ人に任せるようにしてます。

編集部:なるほど。ちなみに、そういう現地のキーパーソンを巻き込むのってかなり重要だと思うんですが、いざ巻き込むとなるとすごく難しいじゃないですか。そこはどうやって巻き込んだんですか?

金松さん:やっぱり、500店舗って言ったから。

編集部:ビジョンで巻き込んだと!

金松さん:たまに彼が「自分は何をやってるんだ」って怒ってますけど、それでも辞めないのは、いつか本当に全米500店舗っていう夢が実現すると信じているからなんだと思うんですよね。

編集部:じゃあ、ビジョンへの共感が人を巻き込む上では大事だというわけですね。

メッセージ

編集部:最後に、何かに挑戦したいと思っている人にメッセージをもらえませんか。

金松さん:僕はみんながみんな起業家になる必要はないと思うんです。本当に大変だし、精神状態もジェットコースターみたいな感じできついので。でも、それでも本当にやりたいというのであれば、それはやった方が良いんじゃないかなって思います。その方が人生楽しいと思うので。

編集部:やりたいやつはやれと。

金松さん:僕は本当に運が良かったなって思うんです。自分のやりたいことが30代前半で見つかったので。人によっては見つからないかもしれないじゃないですか。特に、日本だと恵まれすぎてて解決すべき課題がなかったりするから。例えば、おにぎりだってあれだけコンビニがあれば困らないし。でもアメリカは不便だからOnigillyができたわけで。

編集部:たしかに日本だとコンビニ最強説ありますもんね。

金松さん:そういう意味では、アメリカでも良いんですが、日本以外の発展途上国とかの方が課題自体は見つかりやすいのかなって思います。

編集部:例えば、自分でこういうのがやりたいと思っていても、周りの目を気にしたり、周りに反対されてアクションできないこともあるじゃないですか。そういう場合はどうすればいいんですか?

金松さん:日本でやりづらいのであれば、一度日本を出てみるのもありだと思いますよ。でも、もしそれが本当に自分のやりたいことなのであれば、たとえ日本であっても応援してくれる人はいると思うんですよね。そして、人に何か言われて「やっぱりやめよう」って思うようであれば、それってたぶんそんなにやりたいことじゃないと思うんです。

編集部:間違いないですね!

金松さん:だから、誰に何と言われても自分がやりたいのであれば、その想いを貫いた方が良いんじゃないかと思うんです。

編集部:本気でやりたいことなら、周りも巻き込むくらいの勢いでやった方が良いと。一歩踏みとどまっている人は勇気がもらえたんじゃないかなと思います。金松さん、本日はどうもありがとうございました!

おわりに

本日は、サンフランシスコで大人気のおにぎり屋さん『Onigilly』のCEO 金松孝司さんにインタビューしました。

どんな逆境にもめげず、10年もの歳月を突き進んできた金松さんの生き様からは、「信じること、継続すること」の大切さを垣間見たように思います。そして、その内に秘めた闘志からは、本当に全米500店舗展開を達成する気迫と自信が伝わって来ました。僕も金松さんのように、自分の信じた道を走り続けたいと思います!

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(編集: 中屋敷量貴)

余談ですが、先日投稿した「A day in the life of a Chemistry Startup intern in SF」の動画にも「Onigilly」が出ています。
サンフランシスコでの生活に興味がある人は、ぜひチェックしてみて下さい!

(おわり)