エンジニア・投資家・サッカー選手という3つの顔を持つ男の『超戦略的生存戦略』
本日のゲストは、ビッグデータの解析ソフトを提供する『Splunk』にてソフトウェアエンジニアを務める酒井潤さんです。
学生時代はサッカー学生日本代表としてU21の東アジア競技大会で金メダルを取得するほどの腕前を持っていたという酒井さんが、なぜエンジニアに転身し、ハワイで起業したのか。その裏に秘められたジーコ監督の教えとは何か。エンジニア・投資家・サッカー選手という3つの顔を併せ持つ男の『超戦略的生存戦略』に迫る!

酒井 潤 (Jun Sakai):
1998年同志社大学神学部にサッカー推薦で入学し、在学中は大学日本代表に選出。2001年U21の東アジア競技大会で金メダルを取得。卒業後、北陸先端大の情報科学専攻で修士号を取得。NTTドコモ、ハワイでの起業を経て、米国のスタートアップに転職するもリーマンショックで倒産。その後、米国NTTi3を経て、2012年より米国Splunk, Incに勤務。仕事の傍らYouTubeでサッカー、Udemyで投資とプログラミングの講師を務める。複数書籍を出版している。
アメリカで4番目に給与が高い会社?

編集部:今Splunkではどういったことをされているんですか?
酒井さん:PythonやGoといったプログラミング言語を使って、クラウド上で提供している製品のバックエンドの開発をしています。お客さんがSplunkの製品を使う際、特有のセッティングをしたいというケースが多いので、どんなお客さんでも対応できるようにバックエンドをカスタマイズしてる感じです。

Splunkはビックデータ解析用ソフトを提供している
編集部:扱う物がビックデータだと、やはりお客さんは大企業が多いんですか?
酒井さん:そうですね。ただ、Splunkのライセンスは小さい企業から大企業用まであって、利用プランも幅広くあるので、それこそスタートアップのような小さい企業からカリフォルニア州、NASDAQとかにも使われてますよ。どう使ってるかは分からないですが(笑)
編集部:めちゃくちゃ気になりますね(笑) やはり、そういった様々な企業を相手に仕事をしているとやりがいも大きいのかなと思うのですが、どういうところにやりがいを感じますか?
酒井さん:やっぱり世界中のお客さんが使っているものを開発できるというのは大きなやりがいですね。あと、日本だとあまり知られてないと思うんですが、Splunkはアメリカで4番目に給料が高い会社で、Google、Amazon、Facebookとかよりも給料が高いんです。

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編集部:え、そんなにですか?
酒井さん:ビックデータのようなホットな産業の会社が上場すると、色んな人が株を買ってくれるのでかなり資金が潤沢なんですよね。それでエンジニアとかにもたくさんお金をくれるので、それを知ってるエンジニアが世界中から集ってくるんです。
なので、GoogleとかAmazonから転職して来る人とか、ロシアのハッカーみたいな人も来るので、そういった人達と一緒に開発ができるのはやりがいでもあり、面白いところでもありますね。
編集部:すごい人たちですね(笑) やはりアメリカだと、儲かった分は社員に還元するという風土があるんですか?
酒井さん:そうですね。ただ、これはAmazonも同じですが、Splunkも赤字だったり赤字じゃなかったりを結構さまようんです。
それでも社員にお金を払って、広告にお金を使うというのは、目先の利益よりもマーケットの拡大を優先しているからで、そのあたりはアメリカ的なところですね。日本だと何かのために取っておくというケースも多いので。
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編集部:たしかに、日本は企業の内部留保がすごい額になっていると聞きます。ちなみに、Splunkは日本にも拠点がありますが、日本とのやり取りはあるんですか?
酒井さん:私は直接担当してないですが、時々日本側から製品のバグに関する報告があるので、そういった場合はコミュニケーションをとって仕事をすることもあります。
編集部:そういった交流はあるんですね。

Splunkのオフィスは、PinterestやAirbnbといった
ユニコーン企業が立ち並ぶBrannan通り沿いにある。
U21 東アジア競技大会で金メダル
編集部:たしか大学時代はサッカーをされていたんでしたっけ?
酒井さん:そうですね。キリスト教ではないんですが、同志社大学の神学部にサッカー推薦で入って、本当にサッカーだけをやってました(笑) 在学中は大学日本代表に選抜されて、2001年のU21の東アジア競技大会では金メダルを取りました。

学生日本代表として活躍した酒井さん (動画はこちら)
編集部:ええ!?やばくないですか?(笑) プロからのオファーはなかったんですか?
酒井さん:プロのオファーも頂いたんですけど、左膝の靭帯を傷めてしまってパフォーマンスが落ちたんですよ。なので、その状態でプロになってもあまり活躍できないのかなと思い他の道に切り替えました。
編集部:でも、それまで「サッカーのプロになる」という夢に向かってやっていたわけじゃないですか。そんなに簡単に切り替えられたんですか?
酒井さん:意外と諦めはつきましたけどね。やっぱり、人の幸せというか、、、例えば、震災などの災害で亡くなられた方って、別に悪いことをしたわけではなく、ただそこにいただけで亡くなったわけじゃないですか。
あと、国際大会に行った時に、インドの寺院に捨てられた子供とかお金がなくて処置ができずに亡くなっていく方々を見てきたわけですよ。
そういった方々と比べれば、自分がサッカーを出来なくなることなんて本当にちっぽけだなって。むしろ、生きてるだけで儲けものっていう感じでしたね。逆にそういう経験がなかったら、悔しくて切り替えも遅くなっていたかもしれません。
編集部:選手ではなくコーチになるという選択肢もあったと思うんですが、そこは選ばなかったんですか?
酒井さん:もちろん、初めはサッカーで食べていきたいと思っていたんですよ。でも、色々調べてみるとサッカーのコーチで食べていくのはかなり大変だと知って…
編集部:そこは現実的な問題があったわけですね。
酒井さん:自分ひとりだけなら良いんですけど、家族や子どもを持った時に辛い思いをさせるかなって。なので、世の中結構厳しくて、自分のやりたいことでお金を儲けることができないこともあるんです。
神学部の教授が勧めた「ITと英語」
酒井さん:よく本では「自分のやりたいことをやれば成功する」って書いてますが、現実問題それがうまくいかないケースもあって、神学部の教授に「何か良い道はないですか?」って聞いたら、「今後はITと英語ができれば食っていけるよ」って。
編集部:神学部の教授がITと英語を勧めてきたんですか?(笑)

酒井さん:神学部でサッカーしかやってこなかった学生にITと英語をやったら食っていけるってなかなかアドバイスできないと思うんですよね(笑) あと、その教授に「ITだと新しい言語とか分野がすぐ出てくるから、先を見据えて一番需要がある分野を一つ極めれば、ずっとITをやってきた人たちにも追いつけるし追い抜けるよ」って言われたんです。
編集部:良い意味で現実が見えてる教授だったと(笑) それでITに興味を持って、大学卒業後は北陸先端大で情報工学の修士号を取られたわけですね。

北陸先端科学技術大学院大学は、石川県に本部を置く国立大学
編集部:その後、NTTドコモに入社されていますが、それはどういう経緯だったんですか?
酒井さん:当時はまだ「iモード*」の時代だったんですけど、誰に話を聞いても今後はモバイルが来るという感じだったので、やはりその産業に入るのがベストなんじゃないかと思いドコモを選びました。
*NTTドコモが提供する世界初の携帯電話IP接続サービス。
編集部:なるほど。そこもこれから来る分野に張ったというわけですね。その時の職種はエンジニアだったんですか?
酒井さん:いわゆるSE (System Engineer) ですね。
編集部:じゃあ、SEとして技術サポートみたいなところをやられたと?
酒井さん:そうです。でもドコモって結構委託が多くて、技術的なことは全くやらなかったんですよ。だから、技術を身に付けないと将来的に良い方向に行けないなと思って、上司にお願いして委託で来てくれる方と一緒に仕事をさせてもらったんです。そこでプログラミングとかネットワークの実際の技術を身に着けていったという感じです。
ハワイで起業!?
編集部:その後、ハワイで起業されていますが、ドコモというドメスティックな会社で働いていて、どういう経緯でアメリカに目を向けるようになったんですか?
酒井さん:ドコモで働いていた時に、Windowsモバイル関連のプロジェクトに参加していて、その時に米国マイクロソフトのエンジニアと台湾HTC)社のエンジニアと一緒に仕事をしていたんです。
マイクロソフトから来たエンジニアはもちろん英語を喋るんですが、台湾から来たエンジニアも英語が喋れて、聞くと社内のコミュニケーションは英語だと言うんです。その時、ドコモ側だけに通訳がいて、まずそれにショックを受けたんですよね。しかも、通訳されたITのレベル自体も高くて、ITでも英語でも置いていかれていると。
編集部:もう2周遅れみたいな(笑)
酒井さん:なので、このまま日本にいたら世界に置いていかれるかもしれないという危機感を感じたんです。教授の「トップに身を置くと良い」という言葉を思い出して、トップと言えばアメリカのシリコンバレーだなと。それが海外に目を向けたキッカケですかね。
編集部:そこでシリコンバレーではなくハワイを挟んでいるのはどうしてですか?
酒井さん:もちろん初めからシリコンバレーに行きたかったんですけど、まずビザの問題もあるし、TOEICも300点ぐらいで全然英語もできなかったので。。。
TOEIC300点からの海外転職に関する書籍も出版されている。
編集部:下手したらそこらへんの大学生より出来ないみたいな(笑)
酒井さん:そうですね(笑) なので、まずはハワイに会社を作ってウェブ系サービスのビジネスをやれば、その過程で英語も勉強できるし、会社経営の勉強もできるからMBAを取るよりも近道かなと思ったんです。利益が上がれば自分にビザも出せるので。
編集部:投資家ビザですね。
酒井さん:そうです。あとは、当時日本で株式会社を作ろうと思ったら、資本金が1000万円必要だったんですが、それがアメリカだと1000ドル (10万円) でできると。なので、アメリカで本社を作って、日本に支店を作れば、日本でも株式会社という名刺が使えたんです。
すると、ハワイに本社があるということで色んな社長さんから興味を持ってもらえて、一緒に仕事をすることができたんです。なので、土台に乗るというのが一番大切で、そうすることで経営の勉強もできました。
編集部:環境の力を利用すると。
酒井さん:そうです。運ってコントロールすることはできないけど、向上させることはできると思うんです。例えば、アイドルになりたいっていう人が、田舎の道を歩いていてもなかなかスカウトされないですよね。でも、渋谷とか原宿を歩けば、勿論最後は運ですけどスカウトされる確率は上がると思うんです。なので、そういったことを常に頭に入れて、運を上げるように行動するのがベストなのかなと思いますね。
編集部:じゃあ、ハワイに会社を作ったというのも最先端に身を置くための合理的手段だったというわけですね!
大事なのは英語じゃなくて専門スキル
編集部:その後、どういう経緯でアメリカに来たんですか?
酒井さん:そのウェブ系のビジネスをやってると、やっぱりすぐアメリカに行きたくなったんです。でも、すぐアメリカに行けるほど資金が貯まるわけでもなかったし、英語もそんなにできなかったので、また近道を探したんです。
編集部:それはどんな近道ですか?
酒井さん:要は、日系企業と取引をしている在米日系企業への転職を狙ったんです。そういった企業だと英語だけでなく日本語も必要になるのでチャンスがあるかなと。当時、求人内容的にネットワーク系とウェブ系が多かったので、起業した時もあえてウェブ系にして、ドコモにいる間もネットワーク関係の資格を沢山取ったんです。
編集部:めちゃくちゃ戦略的ですね(笑)
酒井さん:それで、狙っていた企業のウェブサイトを毎日チェックして、求人が出た瞬間に応募しました。それでスカイプ面接したら、かなり向こうも人の採用に焦っていたらしく、「来週アメリカに面接しに来て下さい」という感じで、急遽アメリカに行って、面接して、帰国した次の日には内定を頂いてという感じでした。
編集部:じゃあ、1社目で受かったんですか!?
酒井さん:そうですね。
編集部:日本からアメリカへ転職する場合、ビザの問題とかもあってかなり時間がかかると聞くので、やはり戦略性というのは大事なのかもしれませんね。
酒井さん:戦略的にやると、簡単ではないですけど比較的狙いやすいのかなと思います。あと、アメリカでH-1Bビザ (就労ビザ) を取ろうと思うと、MBAを取ってすごく英語がペラペラな日本人の方でも難しいケースがあるんです。
そして、よく調べてみると、そのH-1Bビザの取得に実は英語力って必要なかったんですよね。要は専門スキルがあって、それを証明する資格と経験があれば良いだけなんです。
編集部:なるほど。
酒井さん:そして一度アメリカに来てしまえば、もう周りはアメリカ人だらけなので、英語は学びたい放題じゃないですか。例えば、日本で1回40分の英会話に10回行ったとしても、それって合計したら1日にも満たないわけで。それならまずはアメリカの企業にいけるように努力した方が絶対に近道だなと思ったので。
編集部:普通の日本人だと「英語ができないと土俵に立てない」って考えますけど、そうではなくあえて専門スキルを伸ばしたということですね!
酒井さん:やっぱり日本で働いてた時は、みんな「英語しゃべれるの?」って聞いてきたんですよ。でもそれって実は重要じゃないので、もしアメリカへの転職を狙う方がいたら、まずはビザの条件を調べた方が良いんじゃないかなと思います。
英語が出来なすぎてブチ切れられる
編集部:とはいえ、やっぱり英語が喋れないと来てから大変じゃないですか?(笑)
酒井さん:全然わからなくて大変でした(笑) 例えば、現地で仲良くなった社員の家に招待された時に、道が分からなかったんですよ。だから電話で聞いてたんですけど、彼は「Where are you?」って聞いてるのに、私には「Who are you?」にしか聞こえなくて、ずっと「I’m Jun. I’m Jun.」って言い続けてたら、「だからどこにいるんだよ!」って相手が怒って電話を切るみたいなこともありましたね(笑) ただ、そういう経験を積むと英語の伸びるスビードもぐっと上がりますよ!
編集部:それは…(笑)

酒井さん:あとは、あえてサービスセンターのオペレーションの人に意味もなく電話したりしましたね(笑)
編集部:なんですか、その英会話ハックは(笑)
酒井さん:何度も怒られて切られましたけど。。。でも、タダじゃないですか(笑)
編集部:めっちゃ迷惑なやつじゃないですか(笑) ちなみに、どのタイミングで英語ができるようになったんですか?
酒井さん:今もあまり得意じゃないですね。やっぱりエンジニアの場合、英語よりもプログラミング言語ができる方が重要なので。会社に行っても朝5分だけミーティングして、その後はずっとプログラミングというようなケースも多く、あまり仕事で英語を使う機会もないです。
あとは今ってチャットが流行ってるじゃないですか。だから、チーム内で問題が起きても結構チャットで済ませるので、ある程度英語ができるようなってからは勉強もあまりしてないですね。なので、例えばITと全然違う分野の人と話すと今でも全然わからないです。もちろん、セールスとかだと英語が使えないとダメですけど、今の自分にはこれ以上必要ないので。
編集部:たしかに、エンジニアだとプログラミング言語が共通言語って言いますもんね。
リーマンショックを乗り越えSplunkへ
編集部:そこからSplunkに転職した経緯を教えていただけますか?
酒井さん:初めは日系の企業にいたんですけど、2008年のリーマンショックで倒産してしまって。それで、早く仕事を見つけないと違法滞在になってしまうということで、1週間に200通ぐらいレジュメを出して、返事が来たのが2件で、うち1件はH-1Bビザの時点でダメで。。。というのも、アメリカ政府的にも外国人ではなくアメリカ人を雇いなさいという感じだったので。
編集部:そうなりますよね。
酒井さん:そのもう一件がたまたまNTTの研究所で、ちょうど日本人で日本語と英語がわかる人を探していたので、バッチリフィットして、事情を説明したら即日面接してくれて、内定もその日にくれたんです。なので、私はかろうじてアメリカに残れました。
編集部:間一髪だったと。
酒井さん:仕事が見つからなくて日本に帰った人も結構いましたね。
編集部:結構大変だったわけですね。
酒井さん:それでNTT研究所で少しお仕事をさせてもらってSplunkにアプライしたんですけど、シリコンバレーの場合、企業が上場 (IPO) する時って噂になるんです。例えば、Facebookが上場する前はGoogleからエンジニアがどっさり流れたりとか。それで、Splunkも来るんじゃないかという感じだったので、それを狙ってアプライした感じです。
*IPO (Initial Public Offering) とは、未上場企業が証券取引所に上場し、誰でも株取引ができるようになること。
編集部:それは実際に上場したんですか?
酒井さん:転職したら一週間後に株式上場しました(笑)
Splunk Prices Initial Public Offering | Splunk Inc.
編集部:すごい(笑)
酒井さん:人事がプレIPO*で今これぐらいだからって話をすれば、もう上場するなんてわかるじゃないですか、受けに来た人は。そういうのが噂になるので色んな人と友達になっておけば上場する企業っていうのが分かりますよ。
*プレIPOとは、IPO目前の状況を言う。
編集部:入る時にストックオプション*はもらったんですか?
*ストックオプションとは、株式会社の経営者や従業員が自社株を一定の行使価格で購入できる権利。
酒井さん:私は1週間前だったのでそんなにもらえなかったんですが、例えば、5年前に入っていれば5億円。4年前だと4億円みたいな感じですね。だから、ランチの会話も車買ったとか、世界旅行行くとか、レストラン買ったとか。しかも2件目みたいな(笑)
編集部:もはや靴感覚ですね(笑)
酒井さん:だいたい上場した直後の会社って社員が働かなくなるんですよね。みんないつクビにしても良いよ的な感じなので。だから、企業もそれを知っているので、上場直後は給料を上げてエンジニアを採用するんです。産業もホットなので、そういう理由でSplunkの給料がアメリカで4番目に高いんです。
編集部:じゃあ、採用基準も甘くなったりするんですか?
酒井さん:そうですね。私の時は上場前だったので、面接も8回で結構コーディングの質問もされたんですが、上場後は簡単な面接で入れちゃうみたいな感じでした。だから、上場した直後の会社に入るのも一つの手かもしれないですね。
編集部:それはかなり戦略的ですね。

Splunkのオフィスには卓球台やバーなどもある
流行りはIPOホッパー?
酒井さん:日本人エンジニアがシリコンバレーに来ると、みんなGoogleとかFacebookを目指すんですが、現地の人たちはちょっと違う感じで生きていく人が多いんですね。
例えば、私の知り合いに凄腕のプログラマーがいるんですが、彼はあえてQAというテストとかをやる仕事でSplunkに入ってきたんです。そうすれば、「そんなすごい人がQAやってくれるなんて」ということで簡単に入れるんです。その後、Splunkは上場したんですが、実は彼、その前にも同じことやっていて、その一個前にも株式上場を体験してるんです。
編集部:そんなIPOホッパーみたいな人がいるんですね(笑)
酒井さん:彼はそれで数十億円を手に入れて、今は好きなことをやってますね。だから、Googleとかで自分の能力を最大限に発揮しようとする人がいる一方で、自分の能力をちょっと落としてIPOしそうな会社を転々とするジョブホッパーみたいな人がいるんです。
Splunkにもハッカーとか凄腕のプログラマーがいるんですけど、そういう人たちに話を聞くと、「GoogleとかAmazonに行っても給料が良いだけで人生を変えられないから」ってことでIPOを狙ってると言ってましたね。
編集部:キャリア観がすごい(笑)
酒井さん:やっぱり日本の道徳観的には、自分の能力を最大限に発揮して頑張り続けなければいけないという考えがあるじゃないですか。でも、ここにはそうじゃない文化の人たちも大勢いて、要は「会社は自分のキャリアを高めるところじゃなくて、自分が将来やりたいことのためにお金をくれるところ」という考え方の人たちがいるんです。そういう人たちはもうリタイヤして、今は自分の好きなことをしてるわけですよ。なので、自分の人生観はそこでかなり変わりましたね。
編集部:日本で暮らしてたらまず出会わない人達ですよね。
酒井さん:シリコンバレーってお金を儲けられるところじゃないですか。なので、発展途上国の人たちはもう意地でもアメリカに来たがるんですよ。私の隣りに座ってるエジプト人の同僚が、こっちだとご飯が15ドル (1500円) くらいするけど、エジプトだと50セント (50円) で食えるって言ってたんです。だから2年働けばリタイヤしてエジプトに戻ってもいいんだと。
編集部:物価が違いすぎる(笑)
酒井さん:日本はアメリカとあまり物価が違わないからそんな考えを持ってる人はいないんですけど、発展途上国からアメリカに来る人っていうのは、意地でもお金儲けをして自分の国に戻ろうって感じだから、ものすごい勢いでH-1Bビザを取りにくるわけですよ。だから、気合いの入り方が日本人と全然違って、仕事でも何でもアグレッシブなんですよね。
編集部:たしかに「さとり世代」なんて言われる時代ですからね。
酒井さん:なので、そういう人たちと仕事をしたことで自分の考え方が変わりましたね。私自身、将来日本に戻るというのも一つの手ですが、例えば、こっちで1億円貯めて、日本より物価の低いインドネシアとかマレーシアに行くという生き方もあるのかなと。
編集部:なるほど。考え方が変わって生き方のオプションが増えたわけですね。
投資・IT・サッカーという3つの顔
編集部:酒井さんって投資家として本も出版されているじゃないですか。投資はどういうきっかけで始めたんですか?
酒井さん:サッカーで怪我をしてしまった時に、突然プロの道を閉ざされて仕事がなくなったんですよ。それで「自分の人生が一発で悪い方向に行くのは良くない」ということで投資を始めたんです。
編集部:リスクヘッジということですね。
酒井さん:それで、ドコモ時代に委託で来ていた方がすごく投資に詳しい方だったので、その人に投資のことを教えてもらったんです。結局、その方は当時36歳で数億円ほど貯めてリタイアされたんですが、そういう人を見てると「ずっと会社に行き続けなくても、投資で成功したら自分が本当にやりたいことができるんじゃないか」って思ったんです。
編集部:あくまで投資は自分のやりたいことを手助けしてくれるツールだと。
酒井さん:そうです。
編集部:それで投資を始めたんですね。ちなみに、今後やりたいことなどありますか?
酒井さん:自分の得意な分野として「IT・投資・サッカー」の3つがあって、その経験やノウハウを日本の子供たちに教えることが出来れば、世界に羽ばたく子も増えるのかなと思うので、そういった教室を開きたいですね。
編集部:たしかYouTubeもやられてますよね。
酒井さん:先日、累計100万ビューを超えました!YouTubeではサッカーの技術を教えていて、やはりそういった動画は年齢を重ねると見せれなくなるので今のうちに撮っておこうと力を入れてます。あと、投資とプログラミングも『Udemy』というオンラインコースで教えてます。

YouTubeでは「プロサッカー選手を目指す技術」を伝授

酒井さんの「Python入門コース」はかなり高評価の模様!
メッセージ / ジーコ監督の教え
編集部:最後に、何かに挑戦したいと思っている方にメッセージをもらえませんか?
酒井さん:私が常に気にしているのは「スプーン1杯のリスクを取る」ということなんです。例えば、命綱なしで綱渡りをするようなリスクを取りすぎる人っていうのは最後に亡くなってしまう傾向が多いんですね。株式投資でも同じで、全財産をかけて失敗する人っていうのは世の中に多いんです。
編集部:いわゆるリスクテイカーですね。
酒井さん:でもリスクを全く取らないのもダメで、例えば、日本人の8割以上がリスクを全く取らない人生を過ごしていると言われてるんですが、どんな成功者でも必ず人生のどこかでリスクは取ってるんです。なので、スプーン1杯ぐらいのリスクを取れば成功する確率も上がっていくんじゃないかと思います。
編集部:それは具体的にどういったことなんでしょうか?
酒井さん:いきなり起業のような大きなチャレンジをしても自己破産してしまうかもしれないので、そこまでリスクを取る必要はないと思っていて。例えば、ずっと同じ会社に勤めている人がちょっと転職をしてみるとか、それぐらいで良いと思うんです。それくらいの小さなリスクだったら失敗してもまた元に戻れますよね。
編集部:なるほど。少し勇気を出して、新たな環境に飛び込んでみるということですね。
酒井さん:そういうことの積み重ねだと思うんですよね。私はTOEIC300点でアメリカに来ましたし、大学の時も神学部から情報系の大学院に行くというちょっとしたリスクを取ってきたので。「やればできる」っていうと白けてしまうかもしれませんが、そういうちょっとしたリスクを取ってチャレンジしていけば、人生良い方向に行くんじゃないかと思います。
編集部:それがあとで振り返った時に大きなものになっていると。ちなみに、酒井さんのその戦略的な考え方ってどこから来てるんですか?
酒井さん:実はジーコ監督の教えがあって。
編集部:あのジーコ監督ですか?

鹿島アントラーズの選手時代から日本代表監督を退任するまで
15年間を日本で過ごしたジーコ氏
酒井さん:そうです!あれは私が小学生の時なんですが、学校でジーコのサッカー教室みたいなものがあったんです。それで最後の質問コーナーの時に、「ブラジルのサッカー選手は学校にも行かずにサッカーばかりやってるから、私もそれぐらいサッカーをやらなきゃいけないんですか?」って聞いたんです。
すると「ブラジルにソクラテスというサッカー選手がいるけど、彼は医師免許も取って、サッカーブラジル代表にもなった。だから、サッカーと同じくらい勉強もしなきゃダメだよ。」と言われたんです。
編集部:そんな選手がいるんですか!?
酒井さん:ジーコ監督は、怪我で選手生命を断って、スラム街に入り浸り、そして人生が落ちぶれていったという人を何人も見てきたと言うんです。だから、サッカーだけやっててもダメだよと。それが頭の中に残っていたので、勉強にも力を入れることができたんです。
編集部:では、そのジーコ監督の教えがあって、今の戦略眼が養われたと。
酒井さん:そうですね。やはり使える時間が限られている分、要領よく生きていかないと東大に行くような方には勝てないので。だから、昔からとにかく近道ばかり探してました。
だから、もう一つメッセージがあるとすれば、良きタイミングで良き指導者に自らアドバイスを聞きに行くというのも大切なのかなと思います。ジーコ監督の時も、自分から聞きに行ったことが、その後の自分の人生に上手く活きたので。
編集部:今日はすごく面白い話が聞けました。酒井さん、本当にありがとうございました!
まとめ
今日はビッグデータの解析ソフトを提供する『Splunk』にてソフトウェアエンジニアを務める酒井潤さんにインタビューしました。
その戦略的な生き方からは考えさせられる点が多く、また英語よりも大事な専門スキルの話やIPOホッパーの話からは「シリコンバレー流のキャリア観」についてお伺いすることができたように思います。僕も酒井さんのように、自分なりの『超戦略的生存戦略』を見つけてみます!(笑)

▼酒井さんが気になった方はこちらもどうぞ
- 酒井 潤 | 公式ホームページ
- 酒井 潤 | Udemy
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