TOEIC305点からの海外MBA。夢だったテレビ局を退職、「当たり前のキャリア観」が壊された80分の授業。
オープンハウスのCIO(チーフイノベーションオフィサー)として、シリコンバレーで新規事業開発に取り組んでいるのが森井啓允さんだ。
中学生の頃からの夢だったというテレビ局を退職し、TOEIC305点から挑戦した海外MBA。そこでは、当たり前だと思っていたキャリア観を崩された瞬間があった。
ソフトバンク時代には周囲の度肝を抜く行動力でシリコンバレー行きの切符を掴み取ったという森井さん。常に自分の信念を持って突き進んできた男の軌跡に迫る。
森井啓允 (Hiromitsu Morii):
久留米附設高校を卒業後、早稲田大学の教育学部社会科学専修に入学。新卒でTBSに入社し、報道関連を中心に担当。2011年にTBSを退職し、アメリカで唯一メディア専門のMBAプログラムを持つMetropolitan College of New York(メトロポリタン大学)に入学。卒業後、ソフトバンクに入社し、法人営業や事業開発を担当。現在はオープンハウスのCIOとしてシリコンバレーで新規事業開発を担う。
オープンハウスは成長率No.1
編集部:今はオープンハウスのチーフイノベーションオフィサーとしてシリコンバレーで新規事業開発をされているとのことですが、テーマはやはり不動産なんですか?
森井さん:もちろん不動産はしっかり見ていますが、不動産だけではありません。僕自身には不動産ビジネスのバックグラウンドも無いので、テーマとしては不動産を含むあらゆるビジネスを見ています。極端な話ですが、もしかするとアメリカで流行っているカフェの日本展開をやったりするかもしれない(笑) それぐらい幅広く見ています。

オープンハウスは東京と名古屋を中心に
不動産の販売を行うホームハウスデベロッパー。
編集部:本当になんでもありなんですね(笑) そういった新規事業に取り組むのは、どんな背景があるんですか?
森井さん:会社がすごく成長しているので新しいことにチャレンジできるというのが大きいです。オープンハウスはオーナー社長が1から作り上げた創設20年目の会社なのですが、実は東京23区内で今一番家を建てていて、日本の不動産会社の中で売上がトップ10に入る規模まで成長してるんです。東証一部上場の売上1000億以上の企業の中で、5年間の平均成長率が唯一平均30%を超えて、断トツ1位なんです。ちなみに2位がソフトバンクでした。
編集部:すごい、そんなに伸びてるんですね!
森井さん:社長がバイタリティと好奇心の溢れる人で、オーナー社長ということもあって、数字にも強く、人心掌握にも長けていてタイプ的にはソフトバンクの孫さんと似た感じです。即断即決で、やると言ったら絶対やるし、自分が一番働くみたいな。
編集部:起業家の鑑みたいな方ですね(笑)
森井さん:それこそ、ソフトバンクは昔はソフトウェア流通の会社で、Amazonは本屋で、DMMはアダルトビデオがコア事業だったのが、世の中の流れを取り入れて変化したからこそ現在のようになったと思うんですよね。
これは僕の解釈ですけど、今のオープンハウスはまさにそういうフェーズで、海外展開や新たな事業領域にチャレンジして、更なる成長の柱を作れるのではないかと。
不動産のビジネスは家を建てたり、物件を仲介するところで終わりになりがちですが、その先にお客さんの暮らしがあるわけで、そういった生活を豊かにできるような可能性を模索しています。
編集部:それが森井さんのやりたいことにも合致しているわけですね。
森井さん:僕はわりと企画屋の体質で、どんどん新しいことをやりたいという感じなので、これまでに培った経験やスキルを最大限に活かしてチャレンジできると思いオープンハウスにジョインしました。

森井さんがいるコワーキングスペース「Hero City」
毎月10個の事業提案?
編集部:新しい事業を探す時はどういった軸で見ているんですか?
森井さん:いろんな業界やテーマがあると思うんですけど、自分の関心がある領域を1つずつ掘り下げていくやり方をしてます。シリコンバレーって浅く広くやってると、全ての企業や技術が宝物みたいに見えちゃうじゃないですか(笑)?

編集部:めっちゃわかります(笑) この会社やばいとか、この人すごいみたいな(笑)
森井さん:でも、何がすごいのか、どこが新しいのかが分からないと本当の意味では評価はできないですよね。
なので、例えばヘルスケア領域を掘り下げる場合には、医療制度や法律の日米での違いなどを調べて、その後にスタートアップのサービスを実際に使ってみるようにしてます。そうすると、このサービスはここをカスタマイズしたら日本にもめっちゃ合うじゃんみたいなことがわかるようになってくるんですよ。
編集部:表面的な情報を追うのではなく、本質を自分で深掘りするのが大事なんですね。
森井さん:1回それをやっておくと、後から別の領域を調べている時にたまたま関連するものが出てきた時でも、良し悪しをすぐ判断できるので役に立つんですよね。
編集部:なるほど。ちなみに今はどのくらいのペースで事業立案をしてるんですか?
森井さん:「1人日経トレンディ」とか「1人 Y Combinator)」みたいになりたいと思っていて、何らかの事業企画やトレンドの深堀を月に10個は提案するようにしてます。

Y Combinatorはスタートアップ企業を中心に
投資を行う超有名ベンチャーキャピタル。
編集部:月に10個!? それはヤバいですね(笑)
森井さん:前職では隔週でレポートを配信して月に3個くらい提案していたので、それより頑張らねばということで、良い経験をさせてもらってると思います(笑)
死ぬほど入りたかったテレビ局時代
編集部:ここから過去の話を聞いて行きたいんですが、新卒ではTBSに入社されたということで、それはどういう経緯だったんですか?
森井さん:僕は死ぬほどテレビ局に入りたかったんです。中学生の頃からテレビ局に入るんだって決めていて、大学選びも日本で1番マスコミ就職率が高いのが早稲田大学の教育学部社会科学専修だと知って、そこに決めました。

編集部:本気度がすごいですね(笑)
森井さん:大学1年生の頃からテレビ局入るための就活やインターンをしてましたね。テレビ局に入るためには就職留年も覚悟してたんですけど、無事に当時視聴率2位でイケイケだったTBSに入社することができました。
編集部:念願だったテレビ局での生活はどんな感じでしたか?
森井さん:みんな社会人になって忙しくなると、だんだんテレビを観なくなるじゃないですか? でも僕は本当にドラマとかテレビが好きだったんで、番組を録画してポータブルDVDプレイヤーで観ながら通勤したり、テレビ局の廊下を歩きながら観たりというのを、スマートフォンがない時代からずっとやっていました。
編集部:ホントにテレビが大好きなんですね(笑) でも、そこまでして入りたかったテレビ局をどうして辞めたのですか?
森井さん:テレビが好き過ぎて辞めたのかも?(笑) 僕の夢はずっとテレビのプロデューサーになることだったんですね。でも、いざなってしまうと、結局何のためにやってるんだっけ?みたいな疑問にぶつかることが結構あったんです。
最近も、ベンチャーに憧れた学生が「起業」がゴールになっているのが問題だと言われたりしますが、当時の僕もそんな感じで、手段と目的がごっちゃになっていました。
とは言え、宣伝部門のプロデューサーとして有名な番組をいくつも担当して、夢が叶った感じもありつつ、だからこそ、次の夢を見つけなきゃ!みたいな焦りが生まれてきました。
編集部:夢が叶った後の葛藤があったと。
森井さん:カッコ良く言いましたが、実際には超ハードワークな制作の現場に心身疲弊することも多かったですね。加えて当時、ちょうどTBSが楽天に買収されちゃうのかも!?テレビの在り方が変わる?みたいな話もあって、色々なモヤモヤの中で、いずれにせよもっとすごいことをやるには自分のインプットが圧倒的に足りないと思うようになってきたんです。そこで、今まで全くと言っていいほどやってこなかった「勉強」に向き合うようになりました。
編集部:改めてちゃんと勉強をしようと思った時に、海外MBAを目指したのは何かきっかけがあったんですか?
森井さん:元々、テレビ局のプロデューサーに英語はいらないだろと思って、高校時代から英語は勉強してなかったんですよね。大学でもあえて英語じゃなくてスペイン語取るぐらいで、英語はなんかむかつくみたいな感じだったんで、入社時のTOEICも305点でした(笑)
編集部:なるほど、どうせ必要ないから勉強しないと(笑)
森井さん:でも、世界陸上の担当をしている時に、オリンピック金メダリストのアメリカ人に東京を案内する機会があって、「あぁ会話できたらな」と思うことがあったんです。
あとは、報道の部署にいた時、海外の事件が立て続けに起こってTOEICの点数が高い同期がどんどん順番で派遣されていくのに、点数が低かった僕ともう1人の同期だけが残ってテープ整理してるみたいなことがあって。
編集部:そこで英語が出来ないことによる不遇な思いをしたわけですね。
森井さん:それで、英語いるじゃんって思ったりして(笑)
あとは、テレビ局の中で実際にすごい放送作家とか有名なプロデューサーを見ていても、過信の可能性は大ですがアイデアとか企画力とかは超トップの中でも勝負できるんじゃないかという自信は自分の中であったんです。
でもそれを実現するための予算やマネジメントだったりのビジネスの部分はサッパリだなぁと。そういう思いから、本場のアメリカで英語でビジネスを身に付けようと思ってメディア専門MBAプログラムを持つMetropolitan College of New York (メトロポリタン大学) でメディアとエンタメについて本気で勉強することにしました。

Metropolitan College of New Yorkはニューヨークのマンハッタンにある私立大学。
キャリア観が崩れた忘れられない授業
編集部:海外に実際に行かれて、苦労したことはありましたか?
森井さん:最初のセメスターは、人生で初めてドラマを観ない期間ってぐらい勉強量がきつくて、もう帰りたいと思うほどしんどかったです。英語もギリギリでクリアして滑り込んだ感じだったので、ヒーヒー言っていてました(笑)
編集部:海外MBAはやはり大変ですよね、、、 勉強量以外の部分で、何か価値観が変わった部分はありますか?
森井さん:価値観を変えた話で言うと、一番最初のアントレプレナーシップの授業で、教授が「あなたの会社を説明してください」って聞いてきたんで、僕は「I‘m from TBS, one of the biggest TV networks in Japan」みたいなことを答えたんです。
そしたら、「No no no、あなた自身の会社よ。あなたはこれから何をするの?」って言われたんです。
編集部:なるほど、「あなたが勤めている会社じゃなくて、あなたが作りたい未来の会社は何ですか?」って質問だったんですね(笑)
森井さん:それで、ハッとして、そんなこと全く考えたことなかったなぁと思って。せっかくTBSを辞めて渡米したのに、卒業後はあわよくばフジテレビとか違うテレビ局に入ろうかな、電博も良いよなぁ、映画なら東宝かなぁみたいなことばかりを入学直後は考えてたんですよ。
編集部:あくまで会社員としてどのメディア企業に入るかみたいな。
森井さん:それが「そうじゃなくて、あなたの人生のミッションは何?」というのをその教授から問われてからは、「何するんだっけ俺?」みたいなことを相当考えましたね。それ以降、どこに所属するかより自分がどうするのかを強く意識するようになりました。
編集部:その考え方はアメリカでは特に強調される部分ですよね。
森井さん:あと、もう1個面白い授業があって、セメスターの最終テストの直前に、先生が「皆さんで個展を開きます」って言ってきたんです。
編集部:個展?
森井さん:各自キャンバスとアクリル絵の具を買ってきて、絵を描けって。
編集部:えっ、マジの絵画の方ですか?(笑)
森井さん:そう、絵画の展覧会をやるって(笑)
なんでテスト前の1番忙しい時やねんってみんな思いながら。
編集部:MBA全然関係ない(笑)
森井さん:僕なんて、マンダラのコーナーがあるからってマンダラを2枚書かされたんですよ。
編集部:しかも自分がやりたいテーマじゃなくて勝手に設定されるんですね(笑)
森井さん:それでキャンバスを買いに行って、ちゃんとやったわけですよ。それで完成した後に、教授がみんなの絵を見ながら、「あなたが書いてきた2枚のうちの片方は今回飾らないことにする」って言ってきたんですよ。
編集部:まさかの不採用(笑)
森井さん:僕はめっちゃ怒って、
「いやいや、この忙しい時期に言われた通り2枚書いてきて、飾らへんってどういうことやねん」って反論したんです。
「え、イライラする? 怒る?」みたいなことを教授に聞かれたから、「怒るに決まってるんじゃないですか」って返したら、
「そう、それが選ばれない側の気持ちよ。メディアマネジメントの中でコンテンツを扱うということは、結局誰か選ばれない人がいるの、だからそれを体感して欲しかった」って言われたんです。
編集部:すごいどんでん返しですね(笑)
森井さん:まんまとやられたと思いましたね(笑) だから、何か選ぶときは、何かを切らなきゃいけないけど、それは本当に切っていいのかということにもちゃんと目を向けるというのは今でも考えるようにしてます。
編集部:それはすごく大切な視点ですね!
森井さん:その学校は、別に偏差値がすごく高いわけではないけど、教授も生徒も本当にエンタメやメディアに特化した人ばかりが集まってるプログラムだったので、いろんな気づきはありました。

オフィスにはTeslaの車を加工して作った受付がある。
ハワイでレストランをやる予定だった?
編集部:MBA後にソフトバンクに入社されたのは、どういった経緯だったんですか?
森井さん:本当はハワイでアミューズメントレストランをやりたくて…
編集部:それはまた大胆な方向に(笑)
森井さん:最初は日本でネットへのコンテンツ配信とかを考えていたんですけど、結局それは自分1人ではできないと気づいたんですね。さらに、クラスメートが在学中に半分ぐらい起業してたのもあって、自分で全部決めれることで勝負しようと思ったんです。
編集部:それで起業を考えたわけですね。
森井さん:俺のやりたいことなんだろうって思ったら、何かスペシャルなものを提供して人を喜ばせたいっていう想いが強くあったので、じゃあハワイでアミューズメントレストランをやろうと。それでハワイにも滞在して、不動産を調べたり、弁護士さんと相談しながらやり方を検討してたんです。
編集部:結構本格的に調べていたんですね!
森井さん:ただ、こんだけ死ぬ気で勉強したら自分も変わってるだろうから、今の自分の力を試したいという気持ちも少しあって、海外留学生には定番のボストンキャリアフォーラムに参加したんです。

ボストンキャリアフォーラム(通称ボスキャリ)とは、毎年11月頃にアメリカのボストンで3日間開催される世界最大級の日英バイリンガルのための就職イベント。
アメリカでは主流の就活?ボストンキャリアフォーラムとは – PARAFT
森井さん:そこで色々見ている中にソフトバンクもいたのですが、ぶっちゃけソフトバンクのことは当時は全然知らなくて、携帯の会社というのと、あと孫さんが同じ高校だったんで、地元一緒だなぐらいな感じで思っていて。
編集部:ホリエモンなど奇才を数多く輩出してると噂の久留米附設高校ですね(笑)
森井さん:とりあえずエントリーシート出してみたら、面接官が人事役員の有名な方で「ハワイでこういうことやりたいと思ってるんですよね」という話をしたんです。そしたら、「いいじゃん、やれよやれよ! ソフトバンクでやればいいじゃん!」って言われて(笑)
編集部:まさかの提案(笑)
森井さん:「うちはなんだってできるよ!」って(笑) 本当に何でも出来るのかはさすがに疑い半分だったんですけど、もしこの人が言っていることの半分ぐらいが本当だとしてもすごい楽しい会社だなと思ったんですよ。
テレビ局など自分が知ってる会社とは全然違う空気感だなぁと感じたのもあって、この人が言ってることを信じてみようと思ってソフトバンクに入ったんです。
編集部:なるほど。入社後、ハワイのレストランはやったんですか(笑)?
森井さん:それで言うと、社内のビジコンでは出しましたよ! せっかく携帯でアメリカ放題をやってるんだからって色々こじつけて、まぁ結局やらせてもらえなかったんですけど(笑)
編集部:さすがのソフトバンクでもそれは駄目だったんですね(笑)
森井さん:でも、本当に好きなことをやらせてもらいましたね。テクノロジーに触れたり学んだりすると、アイデアとかやりたい事は次々に浮かんできたので。こんなにめんどくさい社員はいないだろってくらい、入社当初に自分がやりたいなって思ってたことの何倍も色々とやらせてもらえました(笑)
編集部:それはすごく良い環境ですね!入社時は東京勤務だったんですか?
森井さん:実は一番最初入社する時に、「海外と日本ならどっちで働きたい?」ってことも聞いてくれたんですけど、その時は「東京一択で!」って答えたんですよね(笑)
編集部:あれ、てっきり最初から海外勤務を希望したのかと思ってました。
森井さん:めっちゃ日本に帰りたかったですね。テレビも見たかったし(笑)
編集部:たしかにニューヨークでもずっと見てたぐらいだから(笑)
森井さん:あと、社会人を数年やるまで英語を1ミリもやってこなかった人間が英語で勝負するのはやっぱり難しいなとその時は思ったんですね。僕は人と話すのが大好きで日本語だとしゃべり放題みたいな感じなんですけど、英語で働く自信がなかったのも含めて東京を希望しました。
孫さんにラップでプレゼン?
編集部:その後、シリコンバレーに来たのはどういう流れだったんですか?
森井さん:最初はコンテンツのアライアンス営業として働いていたんですが、ある時海外関連の大きなプロジェクトにアサインされたんです。

その時の上司が「海外での仕事は場数が大事だからとにかく行ってこい!」ってどんどん海外に送り込んでくれて、チームで英語を話せる人がいなかったのもあったのですが、ソフトバンクを代表して毎日僕が何かを英語でしゃべるみたいなことになったんですね。
編集部:なかなかすごい状況ですね(笑)
森井さん:それをやってるうちに「うわ、アメリカとか海外で働くって楽しいかも!」と思うようになったんです。1人でNY出張に行かせてもらって、ホークスのユニフォームを着てSportsとTechのイベントに乗り込んだこともありました。
編集部:そこで海外で働くイメージが湧いたと。
森井さん:あとは、すごく良い出会いがあったのも大きいですね。ある時上司に呼ばれて、「今度、リクルート出身ですごい人が入社するんだけど、ちょっと変わってる人なんだよね。お前も変なやつじゃん? だから、2人でコンビ組んだらすごい上手くいくかもしれない。もしかしたら悪い意味でヤバいことになるかもしれないけど、まぁそしたらまた考えよう」みたいな感じでその方とコンビを組むことになったんです(笑)
編集部:異端児同士を一旦組み合わせるみたいな(笑) もうなんか漫画ですね(笑)
森井さん:その方は渋谷さんという方で、今はソフトバンクを辞めてドイツで活躍されています。当時は役職的には僕の上司になったんですが、例えば僕がニュースを見てて「ビットコイン面白いですね!」と言うと、「え、何が面白いの?」と聞いてくるんです。
「えー、仮想通貨とかなんか未来な感じがして」みたく僕が答えると、「え、何が未来なの? そもそも通貨ってさ、昔は石だったわけじゃない?」みたいな話から始まって(笑)
編集部:ヤバい、ヤバい(笑)
森井さん:「氷と木の箱が冷蔵庫になって、馬が車になったわけじゃない? じゃあ、結局ビットコインは何なの? 結局それは石と同じ役割なのか、それとも別の何かなの?」みたいな(笑)
でも、そういう考え方が僕にはすごくフィットしたみたいで、自分にとってはMBAの時間よりもその人と過ごした1〜2年の方がリアルに学んで成長してる実感がありました。 投資のディスカウントキャッシュフローなんかも、授業でちょこっとやって忘れていましたが、実際に企業買収とかを計画するタイミングで実践的に教えてもらいました。
編集部:実践を通じた学びは大事なんですね。
森井さん:その人は過去の経験上シリコンバレーにも精通していたので、僕に色々な人を紹介してくれたりして、シリコンバレーの歩き方みたいなものを教えてくれました。シリコンバレーへの興味はその人からの影響が大きいですね。
編集部:アメリカで働くのはソフトバンク内でも狭き門だと思うのですが、最後に何か決め手があったんですか?
森井さん:当時、孫さんの講演のシナリオライターや資料作成を担当させてもらっていたこともあって、直接プレゼンの機会を得られたんですね。その時にラップでプレゼンをして、、、
編集部:えっ、孫さんにラップでプレゼン(笑)?
森井さん:その時はフリープレゼンだったんで、とにかく目立ったろうと思って、最初にボイスパーカッションみたいなことをいきなりやったら、会場がシーンとして(笑)
編集部:まぁそうなりますよね(笑)
森井さん:それで「いまビビったっしょ? 俺はこういう驚きをテクノロジーを使って作りたいんだYo」みたいに始めて、最後は「アメリカ行かせてくださいYo」みたいな(笑) まぁやり方は破天荒かもしれないけれど、しっかりロジックやファクトは盛り込んでいったので。
そしたら孫さんが「行ってこいよ」って言ってくれて、それでシリコンバレー行きの辞令をもらいました。
編集部:すごい展開(笑) 自らシリコンバレー行きの切符を掴み取ったわけですね。
今後のキャリア観について
編集部:今後のキャリア観はどのように考えていますか?
森井さん:中学生の時からずっと変わってないのは、何か物事やコンテンツを作って、それをたくさんの人に提供して驚かせたい、感動させたいということです。
編集部:なるほど。
森井さん:今は自分自身が驚いたり、感動することがシリコンバレーという場所に一番あるんですよね。ニューヨークの方がメディアやエンタメがすごいというのはあるかもしれないけど、この辺だと普段過ごしていて、こんなのあったらいいなと思うものは大体サービスあるじゃないですか?

編集部:確かにそれは感じますね。
森井さん:何か不便に感じることにはそれを解決する便利なサービスがあって感動するみたいな、そういう日常的な感動を他の人にも伝えていけたらいいなと思っています。
編集部:その伝える対象は、日本人にフォーカスされているんですか?
森井さん:そこだけを考えてるわけじゃないですが、やはり日本への想いは強いですね。僕は超純ジャパニーズで、社会人になってからアメリカに来て色んなギャップに驚きながらそれに対応していったので、日本の良い所と悪い所の両方が分かっているかなとは思います。
なので、このサービスが日本に受け入れれば日本がもっと良くなるかもって部分にはチャレンジしていきたいですね!
メッセージ
編集部:では、最後に何かに挑戦したいと思っている方にメッセージを頂けませんか?
森井さん:僕は選択肢をちゃんと持って、真剣に考えることが大事だなと思っています。例えば、いま日本だと働き方改革とか言われてますけど、重要なのは残業時間とか仕事量とかではなくて、自分の人生をちゃんと生きてるかってことじゃないかなと。給料が少し減るとしても働く時間が短くなって家族と過ごせる時間があった方がいいとか、そういうことを思考停止にならずに並べて判断するのはすごく大事だなと思うんです。
編集部:周りに流されるのではなく自分で考えて判断するのが大事だと。
森井さん:そのためには、色んな人の考え方やカルチャーに触れるのが必要なんですよね。先ほどの話のように、会社に属するのが当たり前という僕の価値観が80分の授業でボーンって壊されたり、ラップでプレゼンしたらアメリカに来ちゃいましたみたいなことがあるわけで。
編集部:たしかに日本だと出会う機会が少ない価値観ですもんね。
森井さん:あとは、何かを捨てる勇気を持つと強くなるというのも感じてます。僕も死ぬほど入りたかったテレビ局を捨てたり、ソフトバンクという看板を捨てたり、そういう経験の中で個人としての戦闘能力が上がっているのかなと。
スティーブ・ジョブスのStay hungry, stay foolishという有名なことがあるんですが、僕は最近になってstay foolishの本当の意味が分かったような気がしてるんです。
編集部:ほぅ、それは気になります。
森井さん:あれはバカであれとかそういう意味じゃなくて、自分の信念を持って突き進めっていうことだと僕は解釈しています。例えば、新しいビジネスをやりたいと思っても、将来のリスクを色々計算したら怖くてできなくなるんですよね。でも、自分がやりたくて、できるという信念があるなら、リスクを考えすぎないでとりあえずやるというのがfoolishの本当の意味なんじゃないかと思ったんです。
編集部:なるほど、その解釈は納得ですね。森井さんを見ていると、何か行動すると良い出会いがあって、その出会いが森井さん自身の成長をさらに加速させている気がします。
森井さん:そうですね。そういう出会いがあった時に、自分よりもすごい人から色々と吸収するのはもちろん大事ですが、自分の得意な部分、例えば僕ならエンタメやサービスなどで相手に何か価値を与えることを僕は意識してます。僕はジーニーが好きなんですけど…
編集部:アラジンに出てくるランプの精霊のジーニーですか(笑)?
森井さん:ジーニーって、誰かのために何かをすることしか考えていないんですよね。誰かの願い事を叶えてあげることをずっとやってたら、最後にアラジンに出会えて、こっちの世界においでよと言ってくれたっていう。
そういう感じで、誰かのために何かをし続けたら、自分にもいつかチャンスが返ってくるというマインドでGiveをする大事さは、シリコンバレーですごく学びましたね。
編集部:なるほど、すごく良い話を聞けました。森井さん、本日はどうもありがとうございました!

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