【時代はAIロボットアーム!?】Osaroでロボットエンジニアをされている河本和宏さん (前編)
本日のゲストは、産業用ロボット向けのAIソフトウェアを開発するサンフランシスコ発のスタートアップ「Osaro」にてRobotics Software Engineerをされている河本和宏さんです。
もともと日本の戦略コンサルで働いていた河本さんが、なぜアメリカに渡米し、なぜOsaroで働くことになったのか、またカナダに一時避難したというビザ問題の裏話や70歳過ぎのおばあちゃんがAirbnbを使いこなしていたという衝撃的な話など、注目トピックが満載です!
▼前編の内容
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・Osaroでされていること
・超豪華なメンバーと投資家陣
・メカに興味を持った経緯
・外資系戦略コンサル時代の話
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河本和宏 (Kazu Komoto):
京都大学大学院の機械工学専攻にて修士号を取得後、外資系戦略コンサルティング会社のArthur D. Littleに入社。製造業のクライアントを中心に、将来のメガトレンドを見据えた新規事業の戦略立案等に従事。入社4年後に渡米し、Y Combinator発の「Make School」というアプリ開発者養成スクールにてインターン。現在は産業用ロボット向けAIソフトウェアを開発するサンフランシスコ発のスタートアップ「Osaro」にてRobotics Software Engineerを務める。
いま産業用ロボットが熱い!
編集部:さっそくですが、Osaroとはどういった会社なんですか?
河本さん:Osaroは産業用ロボット向けのAIの研究・開発を行っていて、今は物流センターや工場向けのロボットピッキングシステムの開発に注力しています。いまアメリカだとAmazonやウォルマート、日本だとニトリ、スタートトゥデイ、楽天、ファーストリテイリングといったコマース系企業がかなり物流に投資をしてるんですよ。

Osaroは産業用ロボット向けのAIソフトウェアを開発するサンフランシスコ発のスタートアップ
編集部:それはどういった背景からですか?
河本さん:コストダウンしたいとか、よりクイックにお客さんのニーズに対応していきたいというのもあるんですけど、やはり圧倒的な人手不足というのが大きいですね。いま日本だと労働力人口が50年後に4割減少すると言われていて、単純計算でも毎年1%弱減っていくことになります。でも需要は今後も増え続けるかもしれない。そこに自動化のニーズがあるんです。
編集部:時代はAIロボットアームというわけですね。河本さん自身は現在どういったことをされているんですか?
河本さん:肩書はRobotics Software Engineerで、ロボットシステムをお客さんやチームの要求に合わせて動くようにするのが私の仕事です。具体的には、カメラやセンサーのインテグレーション、ロボットの制御、画像認識アルゴリズムの開発、ハードウェアのデザインなどです。あとは前職の経験を活かして、特に日本を含むアジア地域の事業企画、事業開発にも関わってます。スタートアップなので必要なことがあれば肩書に関係なく何でもやってますね(笑)

編集部:スタートアップあるあるですね(笑) よく日本はハードウェアが強いと言われてますが、ロボットの領域でもそうなんですか?
河本さん:間違いないですね。いまロボット界のトップ企業を5つ挙げろって言われたら、3つが日本の企業なんです。ファナック、安川電機、川崎重工ですね。残りの2つが海外で、1つがスイスのABB、もう1つが最近中国企業に買収されたドイツのKUKAというテスラの工場にも入っている赤く塗られたロボットの会社ですね。
編集部:日本企業すごいですね!
河本さん:その他にもデンソーウェーブや不二越、セイコーエプソン、三菱電機なども上位に入ってるんです。比較的小さいと思われている会社でもロボットのハードウェアは結構強くて、ロボットの減速機もハーモニックドライブシステムズという日本企業がトップシェアを取ってたりするので、やはり日本はハードウェアが強いですね。

ファナックの工作機械用NC (数値制御) 装置は世界シェア約50%と言われている。
編集部:なんだか嬉しいですね。じゃあ日本企業もかなり稼いでいるわけですね!
河本さん:ただ、システム全体のコストを考えた場合、ロボット自体のコストは20%くらいなんです。実際にはベルトコンベアやロボットハンドのような専用のハードウェア、あとは画像認識用のカメラなどその他のハードウェアやソフトウェアの導入が必要で、あとは全体をシステムとして動くようにするインテグレーションという作業も必要なので、実はそちらのコストの方が高いんです。
編集部:え、そうなんですか?
河本さん:しかも、ロボットをちゃんと動かすためには、専門技術を持った人に月単位で立ち会ってもらわないといけないので、単純にお金だけじゃなくて時間もかかるんです。
編集部:なるほど。
河本さん:あと、今後ますますロボット化が進んで、今までロボットが使われていなかったところも自動化していこうとすると、単純にシステムインテグレーターの数が足りないんじゃないかという話があるんです。なので、会社としてはそこを簡単にできるようなAIシステムを作ろうというわけです。
編集部:ただロボットアームの場合、色んな形状の商品がある中で、その対象物に合わせて適宜フィットさせていくのって結構難しいのかなと思うんですが、そのあたりはどうなんですか?
河本さん:仰る通りで、実はロボットに新しいものを掴ませようとすると、いちいちCADファイルなどの3Dデータを読み込ませないといけないんです。でも、実際に物流センターで扱う商品数ってそんなことができる量をはるかに超えていて、、、そこに対してAI、特にディープラーニングが使えないかとやっているんです。特に、まだ発展途上の形状認識の技術で今チャンスがあるかなと思いますね。
編集部:じゃあ画像認識とかその辺りがメインになると?
河本さん:そうですね。あとは自動運転でもそうですけど、見たものに対してどうアプローチするか、どのように動きをコントロールするかというのも、注目されている研究領域ではありますね。
投資家は伝説の起業家!?
編集部:Osaroは創業が2015年とのことですが、15年末には330万ドルも調達してるんですね!
産業用ロボットの頭脳を開発するOsaroがPeter Thiel氏などから330万ドル調達 –The Bridge
河本さん:結構期待はされているのかなと思います。投資家はYahoo創業者のジェリー・ヤン、PayPal創業者で伝説の起業家とも言われるピーター・ティール、あとは物言う株主として有名になったサードポイント創業者のダニエル・ローブとかです。

伝説の起業家とも言われるピーター・ティール
編集部:かなり豪華ですね(笑) やはりOsaroが持つ技術力と狙っているマーケットの大きさが注目されているんですか?
河本さん:そうですね。あとは「AI×ロボティクス」の領域に他の会社より前から取り組んでいるというのもあるのかなと思います。ただ、最近はアメリカだけでなく中国からも物凄い勢いで競合が出てきているので、我々も本当に急いで開発を進めないとという感じですね。
編集部:たしかに中国ヤバそうですね(笑) ただ、そこは2015年からやっているという1-2年のアドバンテージがだいぶ活きているわけですね。
河本さん:やはり創業者たちがちゃんとした経歴の持ち主で、今はもう抜けたんですが、1人は大学でマシンラーニングを研究していた教授で、もう1人が現在CEOでFounders Fundというピーター・ティールのVCでプリンシパルをしていたような方なので、それも大きいと思います。当時、Google DeepMindへの投資を担当していたのが現在のCEOなんです。

編集部:すごい(笑) じゃあ、がっつりAIというかマシンラーニングのバックグラウンドがある方たちなんですね。
河本さん:VCって日本だと文系の方も多いですが、CEOの場合、彼自身もともとMITでコンピュータサイエンスと物理を専攻していた背景もあって、技術への理解もすごく深いですし、社内である論文の輪読会にも普通に参加してくるんですよね。
編集部:まさにシリコンバレーのVCというか、テクノロジーとビジネス両方を知ってる感じなんですね。
河本さん:あとCTOがイスラエルから来たシニアな技術者なんですが、本当に何でも知っていて、過去に画像認識用チップの会社をサムスンに売却したことがあるような、シリアルアントレプレナーでもあるんですよね。
編集部:メンバーがすごい(笑)
河本さん:それもあって、初期に強化学習とかディープラーニング関係のPh.Dをたくさんチームに巻き込めていたからそれくらい投資が集まったのかなと思いますね。会社の規模も自分が入ってからちょうど2倍になりました。
編集部:じゃあ会社の成長を間近で見れたわけですね。やはりエンジニアが多いんですか?
河本さん:そうですね。ビジネスサイドの人はほとんどいないです。みんな名の知れた大学でPh.D、少なくともマスターを取ったような人達なので、仕事をする上ではすごく面白いですよ。
本当は建築家になりたかった…
編集部:河本さんは大学時代もメカの勉強をしていたということですが、そこはどういう経緯でメカを選んだんですか?
河本さん:元々何かを作るのがすごく好きで、なぜか幼稚園の頃にクリスマスプレゼントで日曜大工セットみたいなものをもらってましたね。そこでコンピュータをもらってたらもうちょっと真面目にプログラミングとかをやってたと思うんですけど、その時もらったのが金槌と釘とかだったので(笑)
編集部:その時からハードウェア寄りだったわけですね(笑) じゃあ、そういう背景でモノづくりというかハードウェアのメカを専攻したと。
河本さん:でも本当は建築家になりたかったんです。私は関西出身で、阪神淡路大震災の時に自分の家の周りの建物がめっちゃ壊れたんですよ。その時、大工さんの手伝いをした経験もあって、ずっと建築家に憧れてたんです。でも中学生の時に行った建築事務所での社会体験みたいなのがホントに面白くなくて…(笑)
編集部:まさかの(笑)
河本さん:ひたすら図面のコピーしたり、池の面積を測ったりって感じで…そこで将来についてホントに迷いましたね。でもやっぱり何かを作ることには携わっていたいなという想いがあったので、建築家ではなくてメカを選んだんです。

編集部:なるほど(笑) 実際に大学でメカの勉強をしてみてどうでしたか?
河本さん:授業自体はあまり面白くなかったんですが、設計の実習では車のエンジンを作ったり、新しい機能が付いた自転車とかを設計できたので面白かったですね!
編集部:それはどんな機能だったんですか?
河本さん:自分達のチームはジャンプができる自転車を設計しました。京大の正門前ってめっちゃ段差が高くて、みんな勢いをつけてガンって乗り越えるんですけど、下手な人だとたまにコケるんですよ。なので、これは問題だと思って、ボタンを押したらバネがビヨーンってなってジャンプするような自転車を設計しましたね(笑)
編集部:結構面白いですね(笑) それは設計しただけですか?
河本さん:設計だけで実際に作ってはいないです。でもそういう経験を通して、単純にハードを作り込むだけじゃなくて、機械が人の感情や行動を検知しながら何か動作するとか、もっと人のことを考えないとダメだなと思い始めたんです。それで、ハードとソフトの融合みたいところを探求できないかと思い、4年生の時にそういった研究をしている研究室に入りました。
編集部:Human-Robot Interactionのような感じですか?
Human-Robot Interaction (HRI) とは、人が使ったり、人と共存して活動するようなロボットシステムをデザインする研究領域
河本さん:そうですね。やっぱり研究自体はすごく楽しくて、人の動作から感情を読み取る研究だったり、大学院の時は日産自動車との共同研究で、人間にとって分かりやすい自動運転のあり方とか、運転支援の仕方について研究してました。2011年頃はまだGoogleが自動運転を外部に公開し始めたようなタイミングだったので、業界としても半自動運転が主流、ようやく完全自動運転に議論が移行していこうとするような感じでした。

自動運転技術を研究開発するGoogle発のWaymo
編集部:たしかに、一時期そういうニュースが話題になりましたよね。
河本さん:自動化の過程で問題になるのが自動運転モードとそうじゃない時の切り替えなんです。実はこの切り替えの部分が事故に繋がりやすくて、航空機の分野だと既に問題になっているんですが、人が機械のモードを誤って認識してしまうと機械が入力を受け付けないことがあって、ひどい場合は墜落のような重大な事故に繋がってしまうんです。
編集部:たしかに飛行機で聞いたことがあるのが、機械側は着地しようとしてるのに人は持ち上げようとして、機械が分からなくなってエンジンを停止したという話を聞いたことがあります。
河本さん:ロボットの世界でも自動運転の世界でも、今後はそういう議論がもっと出てくると思いますね。実際に今まで工場とかで使われていたロボットが、より人と直接インタラクションするようになってくると、そのロボットが何を考えているかをきちんと人に伝えていくことが大事になってくるので。
編集部:間違いないですね。
河本さん:実際にホテルロボットの場合、今何をしているのかを顔のディスプレイに表示したり、エレベーターに乗った時にわざわざ振り返るように設計されているんです。ロボットなので振り向く必要ないじゃないですか。前から入って、後ろ向きに出れば良いので。でも、ちゃんと人間らしくしているんです。
編集部:言われてみるとそうですね。
河本さん:自動運転でもdrive.aiっていう会社がスタンフォードの近くにあるんですけど、あそこは社長がHuman-Robot Interactionの専門家で、自動運転の際の歩行者とのインタラクションであったり、意思表示の仕方とかを研究・開発してますね。

自動運転用のAIソフトウェアを開発するシリコンバレー発のスタートアップ「drive.ai」
編集部:たしかに横断歩道で車が近づいてきた時に、人間同士だったらアイコンタクトや仕草で渡って良いのか分かるけど、自動運転の車だとそれが分からないし、事故った時は誰の責任なんだみたいなこともあるので、今以上に人とロボットのコミュニケーションは重要になりそうですね。
刺さらなかった就職活動?
編集部:初めは外資系戦略コンサルのArthur D. Little (ADL) に就職されたとのことですが、その背景をお伺いしても良いですか?
河本さん:就職の時は技術が関わる経営の道に行くか、もしくは新しいものを作る道に行くかでホントに迷いました。ただ、ADLは元々技術者が始めたコンサルティングファームということもあって、社員の技術に対する理解がめちゃくちゃ深かったんです。あと、日本だと製造業向けに新規事業の支援をしていて、自分にはすごくピッタリだなと思いました。
編集部:面白そうですね。
河本さん:それでADLからオファーをもらったんですが、やっぱり物を作る側も見てみたいということで、実は一度オファーを断ったんです。それでメーカーの面接の時に、「自分はこの技術を使ってこういう新規事業をやりたいです!」みたいなことを言ったら、全然刺さらなくて…(笑)

編集部:あれ、刺さらないんだ(笑)
河本さん:刺さらなかったですね(笑) 当時は2011年で景気もそんなに良くなくて、まだまだ保守的な風潮があったので…
編集部:新しい事業で攻めるというよりは如何に既存の事業を守るかだったわけですね。
河本さん:だから、別にその会社を批判するわけではなくて、単純にタイミングが悪かったのかなと思います。もちろん、その時に入っていたら脂が乗ってきた2-3年目に何かできたかもしれないですけどね。ただ、ある電機メーカーの場合「新規事業やりたいならマーケティングの方だね」ってエンジニアからマーケティングの採用コースに変えられて、「まずは2年間営業所に行ってもらえるかな?」って言われて…
編集部:まさかの(笑)
河本さん:でもそこで「いいとも!」みたいな感じにはならなくて(笑) そんな時に継続的にコンタクトを取っていたADLの人に近況を報告したら改めてオファーを下さって、それでADLに入ることにしました。結果的にはすごく良い会社でしたね!
編集部:中途の人だと技術サイドから経営コンサルに転職する人もいるけど、新卒でそれを考えている人はあまりいないだろうからADL側としても欲しい人材だったわけですね。
外資系戦略コンサルで新規事業立案
編集部:ADLに入ってからはどんなことをされたんですか?
河本さん:大企業の社長とか経営層が次の事業を考える時って、例えば今後30年の間に何が世の中で重要になるかというメガトレンドを予測した上で、そこにハマるような新規事業を考えていくわけですよ。なので、ADLではそのトレンド予測とそれに基づいた新規事業立案をやってましたね。

編集部:長期的な目で物事を考えていくわけですね。
河本さん:逆に研究開発はたくさんしてるけど、それがなかなか新規事業に繋がらないというところに対しては、実際に現場にいる研究者一人ずつに話を聞いて、その技術が市場でどういう価値になるのかを経営者にフィードバックしてましたね。
編集部:たしかに、そこは技術者だけでは難しいところですよね。
河本さん:もちろん外資系なので、お客様が海外進出をしたい場合には、実際に東南アジアとかの現地を回ったり、あとは企業の価値評価みたいなのをExcelでバンバンやったりもしてましたね。
編集部:いわゆるデューデリジェンスですね。
デューデリエンス (Due Diligence) とは、投資を行う際に本当にその投資対象に十分な価値があるのか、またリスクはどうなのかを詳細に調査する作業
河本さん:そうですね。ADLが技術系の戦略コンサルということもあって、半導体とか電機業界の物凄くテッキーな企業のデューデリ案件が多かったので、面白かったです。
編集部:素人質問なんですが、戦略コンサルと市場調査会社ってどう違うんですか?
河本さん:例えば10年後にこういうニーズが出るだろうから、こういう事業をやらないとっていうのは誰でも分かるんですけど、それってどこの会社にも当てはまる話なので、それはまだ市場調査会社の域を出ないんです。
編集部:なるほど。
河本さん:それを各社に合ったやり方まで落としていって初めて戦略になるんです。それはその会社が持っている技術シーズであったり、ビジネスモデルであったり、あとは得意なビジネスパターンや風土とかですね。そこと新しいビジネスが本当に合うのかどうかを上手く見極めて、ここのバリューチェーンは取れそうだけど、ここはダメだから他社を捕まえようとか、そういう議論をするのがいわゆる戦略コンサルの仕事です。
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