Silicon Valley Workers

シリコンバレーで働く日本人の声を届ける

ホリプロ元マネージャーが語る、芸能界時代とシリコンバレーの共通点

インタビューNEW PEOPLEエンタメコンサル系サンフランシスコマネージャー事業開発海外大学院卒

日本のエンタメ文化をアメリカで着火させよう (流行らせよう) とする男がいる。『NEW PEOPLE』で日米の架け橋を務める吉田猛さんだ。

今でこそ有名なリアル脱出ゲームをシリコンバレーに流行らせたのに一躍買ったのも彼である。過去には、ホリプロで藤原竜也や内田朝陽、高畑充希のマネージャーを務め、アフリカのガーナでJICAの職員、アメリカの日本総領事館で外交官も務めた。

そんなツッコミどころ満載の男が感じた「ホリプロ時代とシリコンバレーの意外な共通点」とは何か?今日は、エンタメをこよなく愛す男の「過去と現在」に迫る!

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吉田 猛 (Takeshi Yoshida):
2004年、明治大学経済学部卒業。大学時代からホリプロで仕事をはじめ、藤原竜也等のマネジメントを担当。2008年、イギリスのバーミンガム大学で国際関係の修士号を取得し、JICA職員としてガーナへ。その後、霞ヶ関の外務省、アメリカのシカゴ総領事館への勤務などを経て、2012年よりサンフランシスコにある「NEW PEOPLE」でイベントプランニングなどを行なっている。

日米を繋ぐ「着火マン吉田」

NEW PEOPLE』はヒト・モノ・コトの「日本→アメリカ」
or「アメリカ→日本」展開を幅広くサポートしている。

編集部:今はどんなことをされてるんですか?

吉田さん:イベントプランニングが多いですが、基本的には「日本→アメリカ」で、面白いクールなサービス、コンテンツ、人などをこっちに持ってきて着火させる (流行らせる) アクションをしてますね。

その着火方法として、たまたまイベントが多くなっていますが、それ以外にも色んなものを企業の方々と一緒にプロデュースしたりしてます。なので、ライブ制作や映画ロケもありますし、こんな食べ物どうでしょうみたいなのもあります。

編集部:じゃあ、何かやりたいという人の想いを形にするのが仕事なんですね。

吉田さん:そうですね。ただ、形にすると一言で言っても、「アメリカに攻めたいんですが、どうすれば良いですか?」という方もいれば、「アメリカのサンフランシスコで、何月何日にこれをしたいんですが、どうでしょう?」という方もいて、これはもう全然違う話なんです。

前者なら「それは何で攻めましょう?アメリカのどこに攻めましょう?」となりますし、後者なら「その時期はあまり良くないなので、この時期の方がいいですね」とか「このイベントとコラボしてみたらこういうことが生まれるんじゃないんですか?」という提案をしたりします。

編集部:そこは現地のことを知っている吉田さんが、時期やパートナーも提案できると。実際、今までにどんなものをお手伝いしたんですか?

脱出ゲーム: ポケモン以来の大ヒット

吉田さん:例えば、イベントでいうとリアル脱出ゲームですかね。あれも着火のお手伝いをしたコンテンツです。京都の会社なんですが、そこから今のリアル脱出ゲームの米国社長が一人でやってきて、今後どうしようかということでサポートしました。

今はもう大成功して、彼ら自身が弊社より大きくなったので、僕らの手助けはそんなに必要ないと思いますが、それでもちょこちょこ一緒にやったりはしてますね。ただ、、、ここ10年でこんなにウケた日本の文化はないと思います。

SCRAP』が運営するリアル脱出ゲームは
シリコンバレーを中心に人気を博している。

編集部:そんなにですか!?

吉田さん:過去にはポケモンがものすごく大ヒットしましたが、今回のリアル脱出ゲームもそれに次ぐくらいのコンテンツですね。正直こんなにシリコンバレーで流行るとは思わなかったです(笑)

編集部:ちなみに、どういった感じの脱出ゲームなんでしょうか?

吉田さん:今だったらこのビルで「パシフィック・リム」というハリウッド映画とのコラボをやっていて、そこでは参加者がパシフィック・リムの世界に放り込まれて、「今こういう状況で、あと1時間以内に脱出しないといけません」というミッションが言い渡されるんです。

参加者はチームを組んで謎を解いて行くんですが、ちゃんと役割を決めて解いていかないと、一人では絶対に解けないようになっているので、そのチームビルディングがテック企業を中心とするシリコンバレーでウケた理由なんだろうなと思ってます。

編集部:たしかに、テック企業だとチームごとにプロジェクトを走らせてるイメージがあるので、みんな得意そうですね!

吉田さん:あとは「エヴァンゲリオン」ともコラボしたり、色んなところとコラボしてますね。ただ、面白いのがそのビジネスモデルで、、、

脱出ゲームは広告媒体の1つ?

吉田さん:最初のビジネスモデルはチケットを売ってなんぼ儲けるかという、いわゆる普通のビジネスモデルだったんです。でも、これだけシリコンバレーでヒットして、下手したら1回に1万人来るようなイベントになったので、もうこのリアル脱出ゲームという体験自体が広告の1つと見なせるようになったんですよ。

編集部:どういうことですか?

吉田さん:リアル脱出ゲームを体験したことがある人なら分かると思いますが、例えば、テーマがドラえもんだったとすると、脱出ゲームを2-3時間体験した後には、みんなドラえもんきちがいになって出てくるわけです。

編集部:もうドラえもんのことしか頭にないわけですね(笑)

吉田さん:そう。つまり「あなたのコンテンツをテーマに脱出ゲームを作れば、何千人という人が一気にファンになりますよ」というわけです。

編集部:それめちゃくちゃ賢いやり方ですね!

吉田さん:10秒のテレビCMとか高速道路のビルボードに広告を出すのも良いとは思うんですが、みんな「ふーん」って感じだったり、高速道路だとシュンって通り過ぎて終わりだったりするじゃないですか。制作費もかなりかかるし。

なので、例えばゲーム会社さんが新しいゲームソフトを出すとすると、我々はそれをテーマにした脱出ゲームを作って、シアトル、サンフランシスコ、ロサンゼルス、ニューヨークなど全米でイベントを開催すると。今はそういう売り方を一生懸命してますね。

編集部:だから、先ほど仰られた新しい広告媒体としての使い方が出来ると。

吉田さん:そうです。「ビジネスモデルぶっ壊せ」という感じです!

今までリアル脱出ゲームとコラボした作品の数々

アメリカは50州50個の国だと思え

編集部:そのリアル脱出ゲームがシリコンバレーで流行ったのは、日米での商習慣の違いやマーケット感の違いもあるんですかね?

吉田さん:エンタメは運のところもあるので、方程式を出せと言われるとなかなか難しいですが、ただこれをシカゴでやってたらウケなかったとは思いますね。

よく「アメリカは50州50個の国だと思え」と言われてますが、これは中国とかでも同じで、「自分、中国は完璧なので任せて下さい!」と言ってる人がもうアウトなんですよね。というのも、中国みたいにあれだけ大きくて色んな都市があると、場所ごとにマーケット感も違うので。

例えば、アメリカだってカリフォルニア州なら合法的にマリファナを吸えるけど、違う州に行ったら吸えませんと。だから、「カリフォルニア州を1つの国だと思え」と言われていて、そのカリフォルニア州だけを見ても、ロサンゼルスならロサンゼルスの攻め方があって、サンフランシスコだったらサンフランシスコの攻め方があるんです。

編集部:じゃあ、シリコンバレーやサンフランシスコで脱出ゲームが流行ったのは、テック企業が多くて、チームビルディングを得意とする、もしくはコミュニケーションをしっかり取る人が多いから、文化にフィットしたんじゃないかと。

吉田さん:それに加えて、会社自身が「もう少しチームワークを鍛えてこい」という雰囲気があるんじゃないですかね。

よくGoogleはこんな感じ、Facebookはこんな感じという風に企業ごとにそれぞれの文化があると言いますが、そんな中でどうやってチーム、組織として同じベクトルを向いてやっていくかというのは彼らのテーマでもあると思うので、それがたまたま脱出ゲームとバチっと合っちゃったのかなと思います。

日本文化はポテンシャルしかない!

編集部:吉田さんは「日本→アメリカ」でお仕事をされていますが、こちらでの日本の文化やエンタメのポテンシャルに関してはどうお考えですか?

吉田さん:何をもって日本のコンテンツとするかですが、基本的にはまだまだニッチですね。僕が扱っている映画・音楽・ファッションとかも、まだものすごくニッチです。

編集部:まだまだポテンシャルがあると。

吉田さん:あると思います。例えば、僕はイイチコさんとすごく仲が良いんですけど、焼酎はまだまだこれから伸びると思いますね。

編集部:たしかに、あまり見ないですよね。

吉田さん:日本ではよく「アメリカでお酒がすごく流行ってます」って言われてたりしますけど、アメリカ人がそんなにお酒を飲んでるかというと、日本食レストランに行ったときに飲むくらいで、要は僕らが中華料理屋に行って、中華料理屋に来たし紹興酒飲むかくらいのたまーに飲む感じ。それが焼酎だったらもっと飲んでないですよね。だからもうスーパーニッチです。

編集部:伸びしろしかないわけですね!

NEW PEOPLEがこれまでにサポートした事業例:
Blue Bottle Coffee』の日本進出も全面プロデュース

吉田さん:あと日本では「アメリカですごくアニメが流行ってます」みたいな報道がされてますけど、全然そんなことなくて、まだまだ余力があり、攻めがいのあるエリアだと思います。

編集部:じゃあ、日本の文化関係、エンタメ関係の人がアメリカに進出するときは着火マン吉田に連絡ですね。

吉田さん:そうですね(笑) アメリカのどこかに攻めたいときは、まず吉田に電話です!

表敬訪問: テック企業に嫌われる日本人

編集部:ところで、日本企業が米国進出を試みる際に躓く点というのはどこなんでしょう?

吉田さん:まず、アメリカを1つの国だと思っているところですかね。例えば「アメリカを攻めたいです」と言われたときに、アメリカと言うのはないですと。それは「ニューヨークですか?ロサンゼルスですか?」というところが一番最初で、それが分かってはじめて「それならこっちの方が良いのかもしれませんね」というのが、日本企業のアメリカ行きたいぜあるあるです。

編集部:ちゃんと都市ごとの商習慣やカルチャーも考慮しないといけないと。ただ、日本企業だと現地企業とのコネクションもなくて、現地のことが分からないと思うのですが…

吉田さん:そこは難しいところですが、日本の方で「全然わからないです…」という方が結構いるんですが、僕からすると「全然調べてないじゃん(笑)」ということも多いです。

なので、みなさんこちらにいるキーマンに会いに行くわけですけど、これももう耳タコだと思いますが、表敬訪問とか視察も嫌われてるというか。

編集部:よく言われてますよね。

吉田さん:でも、僕も昔はやってました。ちょっとだけご挨拶をって。だって、それが日本の文化だから、日本人からするとやって当たり前じゃないですか。なので、そこで日本の感覚のまま来て「最近どうですか」なんて話してたら、基本的に「帰れ」って言われますよね(笑)

編集部:ほんとにそんな感じなんですね…

吉田さん:僕も最初はそんなこと知らなかったので、「あなたとはもう二度と会いません」って言われたり、「猛、お前はなんの話をしに来たんだ」と言われたこともあります。あとは「俺の時間は1分いくらだぞ。今日の話し合いは、A、B、Cのどのビジネスプランでコラボするかっていう話じゃないのか?」とか。

そんな中で学んで行くこともあるのかもしれないですけど、ここまでこの話が有名になっているんだから、アメリカのどこかに攻め込みたいぜという意識がある人は、まずそこはある程度学んでからこっちに来た方が良い時代になっちゃったかもしれないですね。

編集部:目的意識であったり、相手の時間を使っているという意識ですよね。

吉田さん:そうですね。テック企業に訪問して来る人種で一番嫌われてるのが日本人という話も聞いたことがあります。

編集部:え、そこまでですか!?

吉田さん:みたいになってます。「ギブアンドテイクのこの世界で、彼らはテイクオンリーだ」と。社長が来ると言うので、よしよしと会ってみたら、社長が持ち帰るばかりで「社長が持ち帰るんだったら誰が決めるんだよ」という話も聞くので、そういう人がずっと来続けたら「日本人、大丈夫ですか?」ってなるのかなと。

編集部:たしかに…

吉田さん:今の話はたぶんどこに行っても聞くと思うんですが、もう1個話していいですか?

編集部:どうぞ!

吉田さん:僕はホリプロ時代に俳優のマネージャーをしていたのですが、、、

ホリプロ時代とシリコンバレーの共通点

ホリプロ所属の俳優「藤原竜也」 [引用: ホリプロHP]

吉田さん:僕はマネージャーだったので、藤原竜也の仕事を取って来る役でした。なので、常に藤原のプロフィールを持ち歩いていたんです。でも、それと同時に、違う芸能事務所のタレントのプロフィールも持ち歩いていたんですよ。

編集部:どういうことですか?

吉田さん:ホリプロの同期はホリプロの同期でいるんですけど、芸能事務所への就職活動中に出会った人、僕は勝手に芸能界同期って呼んでるんですけど、その芸能界同期とは敵でもありながらすごく仲が良くて、当時自分たちが担当していたタレント、歌手、俳優をどうプロデュースしていきたいかを常に共有し合ってたんですね。

編集部:ビジョンを共有していたと。

吉田さん:そう。だから、他社の仲良いマネージャーたちも藤原竜也のプロフィールを持っていたし、逆に彼らが担当するタレントのプロフィールも僕は持っていたんです。

なので、彼らは僕なしで吉田猛2号くらいのトークができたし、僕も彼らが創りたい世界観をバッチリ理解していたので、彼らなしでもきっちり彼らの営業トークができたと。そういう世界があったんですね。

編集部:それはかなり興味深いですね。

吉田さん:そして、それってシリコンバレーに近いと思うんです。

例えば、普通だったら「自分とは関係ないな」ってスルーする話でも、常にAさんの話が頭に入っているので、「実はこんな人がいまして」とその人がやる営業トークをきっちりして、すぐ繋ぎますみたいなのがシリコンバレーでは日常的にあるんですよ。

自分はそういう人たちのことを「same page people」と呼んでいるんですけど、そういうビジョンややりたいことをちゃんと共有できた仲間がいれば、面白い世界が作れるんじゃないかと思うんです。

編集部:ハッシュタグ (#) ですよね!

吉田さん:そうですね(笑)「#same page people」です。そして、そのsame page peopleをしっかり増やしていくことがすごく大事だと思っているので、日本からいらっしゃるお客様には、この話を必ずするようにしてます。

編集部:目標やビジョンをしっかり共有し合った仲間を増やすことが大事だと。

吉田さん:僕はギブアンドテイクっていう言葉もあまりしっくりきてなくて、、、たぶん、Aさんのビジョンがちゃんと分かってたら、それって自然に出てくると思うんですよ。

「そういうことだったら、僕は全然違うBをやってるんですけど、Aさんならぴったりですよ!」って。これは別に何か見返りを求めてやるのではなくて、自然と出て来ると思うんです。

だから、そのサポートし合う雰囲気が、シリコンバレーやベイエリアにはあるなと思っていて、それは昔ホリプロ時代に、違う芸能事務所のタレントプロフィールを持ち歩いて売っていた時代と近いものがあるなと思うんです。

きっかけは「阪神淡路大震災」

編集部:ちょうど過去の話が出たので話を過去に移しますが、もともとエンタメに興味を持たれたのは、何かきっかけがあったんですか?

吉田さん:一番最初に自分の中に「エンタメ」というキーワードが生まれたのは、阪神淡路大震災の時ですね。僕はたまたま生き残った一人だったんですが、その時中学3年生ながらにして、二つのことを思ったんです。

東北大震災の時にはレディー・ガガが来ましたが、我々の時は『シンディー・ローパー』という今も有名なアーティストですが、彼女が来てくれたり、色んなエンタメの方が来て下さって、ものすごくエンタメから力をもらったんですね。

シンディー・ローパーはアメリカの歌手・女優。
グラミー賞、エミー賞、トニー賞の受賞経験がある。

だから、そこで自分も将来なにかエンタメに関する仕事に就きたいなっていうのが一個生まれたのと、もう一つは単純に世界中から物資やら何やらのサポートを受けたので、これだけヘルプを受けたなら、自分も何か返したいなと思ったんです。

当時、アフリカを救うみたいなのが色んなところで叫ばれていて、国連の難民高等弁務官という難民援助の組織を総括していた『緒方貞子』にすごく憧れていたんです。だから、将来は絶対国連で働きたいなとも思ってました。

日本の国際政治学者。国連人権委員会日本政府代表、
国連難民高等弁務官などを歴任。

編集部:そこで、エンタメと国際協力に興味を持ったわけですね。

吉田さん:そうですね。エンタメ/国際協力、エンタメ/国際協力、エンタメ/国際協力、、、と中3からずーっとそんなことを考えていて。

編集部:そして、ホリプロに入って藤原竜也さんのマネージャーをしたと。

吉田さん:そうです。ただ、マネージャーというと、一般の方には付き人とかお世話をする人みたいなイメージがあるかもしれませんが、ホリプロではタレントをプロデュースして売っていくポジションの人をマネージャーと呼んでいたんです。

編集部:じゃあ、ニュアンスとしてはプロデューサーの方が近いわけですね。

吉田さん:そうですね。僕がホリプロに入社した時に上司から言われたのは、「マネージャーってどういう意味かわかるか?」と。ホテルでいうマネージャーって支配人のことですよね。タレントの支配人というか、タレントは歌う、踊る、演じる/僕はタレントをプロデュースして仕事を取ってくる、そういう内容のことを言われました。

支配人というと少し上からになっちゃいますが、そういう感じでマネージャー1人でタレント3~7人くらいを担当して、彼、彼女らを歌わせるのか、演じさせるのか、どう起用してもらうのかという作戦を練り、企画を立て、営業して、形にして、、、これ全部ですね。

編集部:すごい、全部やってたんですね!

吉田さん:色んなことをやってましたね。

(藤原竜也さんの話はあまり公にできないので割愛します…)

英語に苦労したバーミンガム大学院

編集部:そのあと、イギリスのバーミンガム大学で修士号を取られていますが、それはどういう経緯だったんですか?

吉田さん:国連に入るためにはマスターが必要だと言われていたので、絶対取らないといけないわけですよ。そして、世界中で一番早くマスターが取れるところを探し回った結果、それがたまたまイギリスだったんです。

編集部:どれくらいで取れるんですか?

吉田さん:イギリスだと1年ですね。

編集部:1年!?

吉田さん:もちろん学校にもよりますが、たしか日本が2年、アメリカが2年、オーストラリアが1年半、イギリスが1年という感じで、絶対イギリスが良いって。

編集部:間違いないですね。

吉田さん:あと、サッカーが好きなので、毎週プレミアムリーグに行けるっていう、そんな特権もありました。

編集部:それ、めちゃくちゃ良いですね!

吉田さん:それで、国際協力に興味があったので、Master of ScienceのInternational Development with Mediaで修士号を取ったわけです。なので、どうやってエンターテイメントを使って貧困を解決していくかということを勉強してました。

編集部:ちなみに英語は大丈夫だったんですか?

吉田さん:あっ、それ聞いてくれますか?(笑)

編集部:はい、ちょっと気になって…

吉田さん:日本人ってアメリカ英語を学習してきたわけじゃないですか。そして、イギリスのバーミンガムって、日本の東京・名古屋・大阪でいうと、大阪みたいなところなんですよ。

東京ーロンドン、大阪ーバーミンガム、名古屋ーマンチェスターみたいな。それくらいの都市の規模感で、もうアクセントもひどくて、、、

これは全然誇張してないんですが、相手が英語を喋ってるのか、中国語を喋ってるのか、スワヒリ語を喋ってるのかすら分からない、それくらい癖が強かったんです。

編集部:え、そんなに癖あるんですか?それ、授業はついていけたんですか?

吉田さん:何言ってるか全く分からなかったです(笑) ただ、めちゃくちゃ仲良いインド人がいたので、彼に「今の90分の授業を、めちゃくちゃ優しく、ゆっくり、そして分かりやすい英語で、しかも10分で教えてくれ」って言って(笑)

編集部:そんな無茶苦茶な(笑)

吉田さん:でも、彼がまたそれを10分、15分でやっちゃうわけなんですよ。

編集部:おお、すごいですね!

吉田さん:むちゃくちゃ頭いいやつで、毎回このインド人のジョンに「もう一回授業してもらっていい?」ってお願いしてましたね。でも、大学院なので5人でグループディスカッションとかあるわけですよ。

もうみんなが何を話しているのか全く分からなくて、笑うしかないですよね(笑) ジャパニーズスマイルとか言いますけど。メンバーに「猛はどう思うんだ?」って聞かれても、「I think it’s OK.」みたいな、なにがOKなんだよっていう(笑)

でも、当時は必死こいてやってたので、僕は今アメリカに来て8年くらいになりますけど、今でもまだイギリス英語の方が聞き取りやすいですね。

編集部:死に物狂いで吸収した言語だったわけですね。ただ、インド人の英語も結構クセ強いのに、よく乗り切りましたね。

吉田さん:そこはグッドポイントで、彼の英語も難しかったですが、ギリギリ分かる感じで。そして、面白かったのは、彼の生まれ育ったインドのエリアは「俺のものはお前のもの、お前のものは俺のもの」文化だったので、ランチで弁当とか持っていくと普通に僕のを食べ始めるわけですよ。

ちょっと待ってみたいな(笑) これ僕のですって言うと、俺のを食えみたいな。かなりスパイスの効いたカレーみたいなやつを、匂いう〜んってなりながら食べたり、そんな感じの楽しい大学院でしたね。

編集部:じゃあ、インドでは当時からシェアリングエコノミーが浸透していたわけですね!

吉田さん:そういうことにしましょう!

一同:(笑)

編集部:その修士号を取られたあと、ガーナに行ってますよね。これは何があったんですか?

盗作を恐れ、ガーナへ

ガーナは西アフリカのギニア湾に面する国
ダイヤモンド、金、カカオ豆の産地として有名

吉田さん:修士論文を書くとき、よく盗作が問題になるじゃないですか。だから、スーパー極論、絶対盗作じゃないって言い切るには、今まで誰も行ったことのない村に行くのが一番だったんですよ。特に、僕は貧困解決がテーマだったので。

編集部:それがガーナだったと。

吉田さん:そう。あと、知り合いがガーナに行ってたというのもあって、バーミンガムの大学院時代からガーナには行ってたんです。それで、現地でJICAという外務省の国際協力部門のような人たちにもお世話になってて。そしたら、「ここで働いちゃえばいいじゃん」みたいな話になったんです。

JICA (独立行政法人国際協力機構) は、日本の政府開発援助 (ODA) を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行っている。| JICA

自分としても国際協力に携わりたかったし、かと言っていきなり国連なんて無理だろうと思っていたので、JICAなんてもう完璧じゃないかと。なので、「卒業したら絶対行く」みたいな感じでガーナに行きました。

編集部:ちなみにガーナでは何をしたんですか?

吉田さん:ガーナはサッカーが人気なので、今となってはベタかもしれないですけど、それこそW杯の予選とかハーフタイムのときに、エイズやHIVをどうやったら減らせるかというのを、ちょっとエンタメを使って分かりやすく伝えたりしてましたね。

やっぱり観衆の人でも分かってない人が多いので、ああいう感染率が高い病気に関する教育は大事なんです。

編集部:そこをエンタメでわかりやすく教育していたわけですね。ちなみに、ガーナで困ったことって何かありましたか?

吉田さん:困りはしなかったですけど、雨が降ったらすぐ腰くらいまでいっちゃいますし、やっぱりずーっと湿気てるので、もう蒸し蒸しを超えてたりはしましたね。

あと、ずっとガーナのものを食べてたら、自分では臭わないんですが、やっぱりインドの方にはインドの香りがするように、僕もガーナ的な匂いがする体臭に変わっていて。。。それも困りはしなかったですが、日本から来た方に会うと「あっ… (鼻をおさえる)」みたいなのはありましたね(笑)

編集部:体臭を含め、色々と入れ替わったと。やはり、ガーナといえばチョコみたいな匂いがするんですか?

吉田さん:いや、なんて言ったらいいんでしょう。基本的にチャーハンみたいなやつとフライドチキンみたいなやつなんですけど、それがかなり特殊な味で。

編集部:エキゾジックな…

吉田さん:そうそう!それが、めちゃくちゃおいしくて。

編集部:おおお!

吉田さん:それをずっと食べてたら、それっぽい匂いに変わっちゃいました。

編集部:なるほど…

吉田さん:あと、僕たち日本人は自分たちのことを黄色人種だと思ってますけど、彼らにとっては白人なので、白人さん白人さんって言われるんです。彼らは、自分が今まで出会ってきた黒人の方の中でも見たことないくらい肌が黒いんですね。

このとき、なにかしら自分の中に偏見って入ってるなって再確認したんですけど、100人の中に自分だけ白人として1人いて、あと99人真っ黒っていう状況だと、どれだけこの人たちが良い人たちだと分かっていても、「なんかこの人たち怖いんじゃないか」って最初の頃は思っちゃったんですよね。

編集部:圧迫感みたいなものですかね。ただ、それは人種に関係なく、違う国の人だからというのもあったのかもしれないですね。

吉田さん:そうですね。あと、当時ガーナでは飛行機に乗ったらすぐ落ちるって言われていて、というのも古い機を使っていたので。だから、飛行機はあまり良くなかったですね。

それで、飛行機の場合、無事に着陸したらみんな拍手なんです。パチパチパチって。あと着陸の時もアナウンスがなかったり。

編集部:じゃあ、インフラはあまり整っていなかったと。

吉田さん:ご飯もおいしかったですし、人も良かったですし、一応外務省の中では渡航禁止区域のトップ10に入るエリアではあったんですが、実際に行ってみたら良いところでしたね。

ただ、ちょっと悲しかったのは、日本人としてはやっぱりガーナといえばチョコレートっていう感じで、「日本ではガーナチョコレートがすごく人気なんだ!美味しいよね!」って話を振るわけじゃないですか。

でも、ガーナの大半の人がチョコレートがカカオからできてるってことを知らないか、そもそもチョコレートを食べたことがなかったりするので、話が通じなかったんです。

編集部:え、そうなんですか!?

吉田さん:「・・・。」みたいな。それは少し悲しかったです。ただ、ガーナは文化も含めて色々と興味深い国でしたね。

編集部:そこには人との繋がりや愛があったと。そして、そこからアメリカですよね?

吉田さん:そこから少しだけ霞ヶ関の外務省で働いて、シカゴの総領事館で外交官 (スポークスマン) をして、6年前かNEW PEOPLEに移ってという感じですね。

なので、最初にエンタメ (ホリプロ) に行って、次に国際協力 (JICAでガーナ) に行って、両方を経験した上で、自分はエンタメの方があってるかもしれないなとなったわけです。

今後も着火マンであり続けたい

編集部:では、今後のキャリア観についてお伺いしてもいいですか?

吉田さん:今後も「日本→アメリカ」で何か着火したい、もしくはアメリカ大陸にタックルしたいという人は吉田に電話という存在にはなりたいですね。吉田に電話と言っても、本当にずっと電話がかかってきたらアレなんですが…(笑)

イメージとしては、少なくともエンタメ業界にいて、日本にいる方々の最初のノック先にはなりたいと思いますし、今エンターテックという言葉が出てきてますけど、シリコンバレーのテクノロジーとエンターテイメントを掛け合わせたら何が生まれるんだろう?みたいなのは、次の自分のテーマでもありますね。

編集部:引き続きエンタメの分野を突き進みたいわけですね。

吉田さん:あとは、これまで色んなイベントを手掛けてきているので、それこそ日本でいうフジロックフェスティバルみたいなアメリカで一番大きい「コーチェラ・フェスティバル」とかの総合プロデュースもやってみたいですし、サンフランシスコだったら「ドリームフォース」とか「オラクルワールド」も手掛けてみたいですね。

『dreamforce』は『salesforce.com』が主催する世界最大の
ソフトウェアカンファレンス (事前登録数17万人+)

編集部:ドリームフォースとかオラクルワールドってかなり大規模なイベントじゃなかったでしたっけ?

吉田さん:そうですね。この前サンタクララのリーバイスタジアムでスーパーボウルやってましたが、あのスーパーボウルみたいなアメリカをあげてやってるイベントよりも、オラクルワールドとかドリームフォースの方が規模が大きいんですよ。

それってどういうこと?っていう疑問があるのと、あんなに大きいイベントでも誰かが仕切ってるわけで。それを自分もやってみたいなと。

スーパーボウルはプロアメリカンフットボールリーグの優勝決定戦。アメリカ最大のスポーツイベント。

サンタクララのリーバイススタジアムで行われた第50回スーパーボウルは観客動員数7万人を超えた [引用: Wikipedia]

いつもイベントやってて思うのは、例えば僕の誕生日会を5人でやるのも、中学校の文化祭で3年1組のリーダーとしてプロジェクトをやるのも、J-POPサミットをやるのも、フジロックフェスティバルをやるのも、基本的にやってることは何も変わらないんです。

編集部:規模が違うだけだと?

吉田さん:はい。中学校の文化祭なら、教頭先生に体育館と運動場を使っていいかと聞きに行く。サンフランシスコでイベントをやるなら、SFPDにユニオンスクエアを使っていいかと聞きに行く。どちらも場所を選んで、許可をもらうだけなんです。

編集部:言われてみるとそうですね!

吉田さん:今12万人くらいのイベントまでは経験したので、次はあのサンフランシスコのめちゃくちゃでかいドリームフォースみたいな大きなイベントを全部手掛けてみたいです。

あとは、今でも藤原竜也とか内田朝陽とか高畑充希をハリウッドに連れてきて、ハリウッド映画に出したいという想いもありますし、もしくは、せっかくアメリカにいるんだから、ブラッド・ピットみたいなこっちのタレントのマネジメントもやってみたいですよね。とにかく、やりたいことがいっぱいあります!

メッセージ

編集部:では、最後に何かに挑戦したいと思っている人にメッセージをいただけますか?

吉田さん:これは僕がよく言う言葉ですが、自分のモットーは「できるかできないかじゃなくて、やるかやらないか」なんです。要は、できるできないを考える前にまずはやってみて、それでできないんだったら、なぜできないかを考えて、そしてできるようになると。つまり最初からできないって言うなということです。

本当に自分がなりたいと思う人や、やりたいと思うことがあるんだったら、なんでやらないの?っていうことなんです。そういう意味で、できるかできないかじゃなくて、やるかやらないか。そして、常にトライしていくっていうのが僕のベースにあるんです。この考え方は大学時代のゼミの先輩からの影響なんですが…(笑)

編集部:そこは触発されたと(笑)

吉田さん:あとは、same page peopleですね。

編集部:自分のやりたいことに共感してくれる人を増やすことが大事なわけですね。

吉田さん:共感する人というよりは、一瞬で自分のやりたいことを説明できて、自分のやってることを完全に分かっている人。そして、僕なしで僕のやりたいことを完全に説明できる人を増やすということですね。

もちろん、そのためには共感が必要なんですけど、共感だけじゃなくて、共感した後にその人の話を完璧にできるようになることが大事で、それが「#same page people」です。それがポイントです。

編集部:例えば、家族を持つとなかなかリスクを取れなくなる人もいると思うのですが、そういう人はどうしたらいいんですか?そういう人も「やるかやらないか」なんですか?

吉田さん:いや、それはたぶん家族と「#same page people」になれてないですね。なれてないっていうと語弊がありますけど、僕は結婚当時から同じ話をしてるので、あまりブレてないと思います。確かにガーナの時はあまり、、、

編集部:ガーナの時はもう結婚してたんですか?

吉田さん:してました。あの時は、体臭が変わったり、インフラが整備されてなかったり、すぐ洪水になったりということがあったので、あまり共感されませんでしたが、基本的には自分が今までどういう人生を送ってきて、将来的にはこういうことがしたいというのは共有しあっているので、そういう風にやっていけば良いんじゃないかと思います。

編集部:なるほど、お互いのやりたいことや考え方などをしっかりと共有することが大事だというわけですね。なんだか吉田さんと話していると勇気がもらえました。吉田さん、本日はどうもありがとうございました!

終わりに

本日は、『NEW PEOPLE』でイベントプランニングや事業開発を務める吉田猛さんにインタビューしました!

ホリプロ時代にやっていたことと、シリコンバレーで行われていることが同じだというお話からは、すごく人間社会の本質を垣間見たように思います。僕も自分のやりたいことやビジョンを完全に理解し合う「#same page people」をどんどん増やしていきます!

今後の取り組みについては、FacebookページやTwitterでも随時最新ニュースを更新していく予定です。もし興味がある方はこちらもいいねやフォローをしていただけますと幸いです。

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(ビジョンじゃない!)

(文・編集: 中屋敷量貴)